バイデン大統領は就任早々から矢継ぎ早に大統領令に署名、トランプ前政権時代に実施された政策を次々とひっくり返している。その是非は置いておくとして、特徴は反トランプを鮮明にしていることだ。トランプ氏が就任して何かにつけ反オバマを強調した前例に倣い、同じことをしている。それもとりあえずは無視するとして、バイデン外交の対中国政策は何か。素人目にはまだわからない。そんな中で先週はブリンケン国務長官と楊潔篪政治局委員(外交担当)が電話会談を行った。ロイターによるとブリンケン氏が「新疆ウイグル自治区やチベット、香港における人権や民主的価値を支持する米国の立場を表明した」のに対して楊氏は、「米国は最近の過ちを『正す』べきだと指摘。中国と米国は互いの政治制度や発展の道を尊重する必要がある」と述べたという。初めての意見交換にまとわりつく儀礼的な挨拶といったところか。

ブリンケン氏はミャンマーの現状にも触れた。中国に対して「軍事クーデターを非難せよ」と求めたのである。さらに、台湾海峡を含むインド太平洋地域の安定を脅かす中国の動きについて、「責任を追及すべく同盟国と取り組む方針を改めて示した」(ロイター)と伝えられる。この通りだとすればかなり踏み込んだ発言だ。ポンペオ国務長官は離任の前日、新疆ウイグル自治区で中国が行なっていることは「ジェノサイド」だと断言、バイデン政権に後戻りしないように釘を刺した。ブリンケン新国務長官もこの認識に“同調”していると伝えられており、バイデン大統領とは反対に前政権の対中国強行策は引き継いでいるようだ。バイデン大統領も4日に、中国は最も重大な競合国との認識を示した上で「人権、知的財産権、グローバル・ガバナンスを巡る中国の攻撃」に引き続き対抗すると表明している。「対抗する姿勢」がどれくらい確信的なのか判断できないが、表面的には“強気”にみえる。

その一方で、「国益にかなう場合は協力する用意がある」と柔軟姿勢も付け加えている。柔軟と言えば聞こえはいいが、受け止め方によっては妥協に活路を見出そうとする協調型政治家の“弱腰”といえなくもない。ブリンケン氏は楊氏に対してミャンマーの国軍を「非難せよ」と求めているが、裏で軍部の背中を押している中国に対して「協力する用意がある」と大統領が明言すれば、中国はバイデン政権組みやすし見下すだろう。当面の焦点はミャンマーの軍事クーデタにどうやって対抗するかだ。「同盟国との協調」をベースにしているとはいえ、米国はリーダーシップをとらないという意味ではないだろう。ミャンマーに対する制裁の検討に入っているようだが、安倍前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」に魂を入れるためにも大統領のリーダシップが必要だろう。日米豪印の4カ国によるオンラインの首脳会議も検討されているという。今週はホワイトハウスからほとんどでないバイデン大統領の行動力に注目してみたい。