21日が期限となっている緊急事態宣言を解除するか否か、今週はこのテーマをめぐって政治やメディアが大騒ぎするだろう。新型コロナをめぐり議論が途切れることはない。多少うんざりしつつ、いろいろな人の発言を目に止めながら、時々ハッとすることがある。今朝目に止まったのは次のひと言。「常識や頭を悩ませるほどもない問題から政治的信条は切り離す必要がある」(ブルームバーグ)。感染症の世界的権威の一人米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長がテレビ番組で、一部の人が新型コロナウイルスのワクチン接種に消極的になっていることをどう思うかと聞かれて答えたものだ。この発言の前に、一部の人が消極的になっていること自体を「理解に苦しむ」としている。

ここでいう一部の人とは、一般の米国民を指しているのではない。トランプ前大統領並びに同氏が率いる共和党を指している。11日に公表されたPBSニュース・アワーとNPR、マリストの調査によると、「共和党支持者だとする人の41%は連邦政府が承認したワクチンを接種しないと回答した。中でも共和党支持者の男性は49%が接種しないとした。一方、民主党支持者の男性で接種しないと回答したのはわずか6%だった」。この調査結果に対するファウチ氏の答えが前掲の「理解に苦しむ」である。トランプ氏は新型コロナについて「いずれ終息する」と楽観視し、初期対応で後手を踏んだ。その後もコロナ対策よりも経済を優先し、「マスクをしない自由」を間接的にアピールしたりした経緯がある。そのトランプ氏の影響だろうか、ワクチン接種を拒否する人が共和党には多いようだ。

だが、1年前を振り返れば明らかだが、ワクチン開発を強引に推進したのはトランプ氏だ。「ワープ・スピード作戦」と称して官民が連携、手間暇かかる動物実験やヒトでの治験を省略、簡略化し、たった1年足らずの間にワクチンの実用化に漕ぎ着けたのである。MERSやSARSワクチンの経験があったとはいえ、核酸ワクチンと呼ばれる新型ワクチンの人体への接種は今回が初めてである。もっと言えばMERSやSARSワクチンはいまだに完成していない。共和党員ならずともワープ・スピードで開発されたワクチンはできれば摂取したいくない。そう考えるのが「常識」のような気がする。個人的には接種を拒否するつもりはないが、アストラゼネカ製のワクチンでは血栓の副反応が疑われている。因果関係は分かっていないが、ワープ・スピードがもたらす早期開発に落とし穴はないのか、少し気になっている。