【ソウル時事】住宅建設・分譲などを担う韓国土地住宅公社の職員らが不正に土地を購入していた疑惑が文在寅政権を揺るがしている。文政権下で不動産価格が高騰し、家を買えない庶民の怒りに火を付けた。

 問題が明るみに出たのは今月2日。公社の職員らが2018~20年、ソウル郊外の住宅開発対象に指定された地域の土地を発表前に不正に購入していた疑惑を市民団体が提起したことだった。転売による利益や補償金を狙ったインサイダー取引の疑いが濃いとみられている。

 文政権発足以来、ソウルのマンション価格は1.5倍以上に上がったと言われている。文政権が幾度となく対策を打ち出しても焼け石に水。疑惑が提起された住宅開発も不動産価格抑制策の一環だった。不動産投機できる富裕層と手が出せない庶民との格差は広がる一方だ。

 今回の疑惑で、文政権への批判はさらに強まった。12日に民間世論調査機関が発表した政権支持率は1週前より2ポイント減の38%。「支持しない理由」のトップは「不動産政策」の31%だった。韓国メディア関係者は「現政権支持者が多い40代はマイホーム購入を考える世代。支持が揺らいでいる」と解説している。

 公社を所管する卞彰欽国土交通相は12日、辞意を表明した。政府は火消しに躍起だ。

 しかし、一部保守系メディアは文大統領の息子や娘の不動産投機疑惑も報じ始めた。来月のソウル・釜山市長選を前に野党側は「人が1人交代して終わる問題ではない。大統領は謝罪とともに国政の全面的な刷新について立場を明らかにすべきだ」(最大野党「国民の力」)と攻勢を強めている。