アストラゼネカが開発したワクチンの接種を一時停止する国が増えている。ロイターによればドイツ、フランス、イタリア政府は15日、英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を中断すると発表した。接種後に血栓ができるなどの副反応が疑われる事例が報告されていることを受けたもので、すでに遅延している欧州のワクチン接種計画に一段の影響が及ぶ恐れがある。この他、スペインのラジオ、カデナ・セールは匿名の当局者の話として、スペインでも同ワクチンの接種が少なくとも15日間、中断されると報じた。同社のワクチンを接種した人の中に、脳の血管に血栓ができて死亡する事例が散見され、予防的措置として接種を一時的に中断する国が増えている。

アストラゼネカ製ワクチンを巡っては先週デンマークとノルウェーが接種を中断。アイスランド、ブルガリア、アイルランド、オランダも同様に中断した。新型コロナウイルに罹患すると血栓ができて血流が悪くなると指摘されていた。同社のワクチンとの因果関係は今のところはっきりしていない。そんな中で政治的な判断として接種を一時停止する国が増えている。因果関係については世界保健機関(WHO)のスワミナサン首席科学者がオンライン形式の記者会見で、これまでところ血栓との関連性は確認されていないと述べ、「パニックを起こしてほしくない」(ロイター)と冷静な対応を呼びかけている。このほか、フランスのマクロン大統領も、欧州医薬品庁(EMA)による精査が16日に完了するまで同ワクチンの接種を停止すると発表。各国とも「予防的、一時的な措置」(同)として接種の中断に踏み切っている。

そんな中で米国立衛生研究所(NIH)のコリンズ所長は昨日、アストラゼネカ製ワクチンについて、独立助言委員会が現在データを精査しており、約1カ月以内に米国で緊急使用が許可される可能性があると述べている。因果関係はないとの前提に立った発言だと思うが、専門家の間にもこのワクチンの有効性を確信しているかのような発言が飛び出している。こうした発言を見ると素人は戸惑い、疑心暗鬼に陥り、下手をするとワクチン全体に対する不安感が高まりかねない。そうした懸念を打ち消すためにも一時的な接種中断はやむを得ないだろう。WHOのチーフサイエンティストであるスーミャ・スワミナサン氏は少し前に、最大8種類のワクチンが「年末までに臨床試験を完了し当局の審査を受ける可能性がある」と述べている。オロナ対策の決め手でもあるワクチン、不安を抱えながらも開発の勢いは止まらないようだ。