米連邦準備制度(FRB)は17日に終了した公開市場委員会(FOMC)後に声明を発表、政策金利の据え置きと国債などを買い入れる量的緩和の継続を全会一致で決定した。金利は2023年度まで現状水準を維持するとの見解も示した。注目された市場金利(米長期国債利回り)の上昇についてはこれといった反応を示さなかった。インフレ率は年末までに一時的に2.4%と、FRBが目標とする2%を上回ると予想。だが、その後は低下するとの見方を示した。これを受けて米国市場ではNYダウが前日比で189ドル上昇。ロイターによると米10年債利回りはFOMC前に1.689%と、20年1月以来の水準に上昇していたが、FOMCの声明を受け1.640%まで戻した。為替市場は一時109円台まで進んだ円安の流れが若干修正され、1ドル=108円台まで戻している。
バイデン政権による1.9兆ドル(約200兆円)の追加コロナ対策の成立やワクチン接種の進展により、金融市場には景気急回復のムードが急激に高まってきた。こうしたことを受け米国の10年国債利回りが上昇傾向を強めている。ゼロ金利政策を続けるFRBはこの動きをどう見ているのか、今回のFOMCの最大のテーマだった。声明はこれに関して以下のような説明をしている。「委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。この長期的な目標を下回るインフレ率が続いているため、委員会は当面、2%をやや上回る程度のインフレ率の達成を目指す。これによりインフレ率は時間とともに平均で2%になり、長期的なインフレ期待は2%にしっかりととどまる。これらの結果が達成されるまで、委員会は緩和的な金融政策の姿勢を維持すると予想する」。
国債利回りをインフレ率に置き換えてみれば分かりやすい。上昇したとはいえ利回りは依然として2%の目標には届いていない。かつ、コロナの影響で「950万人の雇用がなお失われたままになっている」(ロイター)。パンデミックは社会的弱者に計り知れない悪影響をもたらしている。そうした弱者に目を向ければ、政策金利を引き上げる余地などどこにもない。これがパウエル議長の経済を見つめる視点なのかもしれない。とはいえ、バブルを放置して本物のインフレに火がつくようなことがあれば、影響を受けるのもまた社会的弱者である。神の手といわれ森羅万象を写し込む市場にも死角があるが、FRBのパウエル議長も神様ではない。間違いがないとは言えない。思惑と思惑が交錯する中で、物価と金利はいまのところそれぞれの道を歩んでいるように見える。どこかでこの両者はカップリングするのだろうか。
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