東京五輪・パラリンピックの開閉会式の演出を統括していた佐々木宏氏がお笑い芸人の渡辺直美さんの容姿を侮辱するようなメッセージを演出チーム内に送っていた問題について、渡辺さんは19日夜に行ったYouTubeのライブ配信で言及した。トークの一部は以下の通り。

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 私が一番、この報道について最初に思ったのは、連日の記事やテレビの報道で傷つく人がいるだろうな、と。そこが私の中では心配だった。コンプレックスに悩んでいる子たちもいっぱいだろうし、それを乗り越えた人たちも、もう一回それを思い出してしまうことだな、と。ネガティブな内容だったし、落ち込んだり、言い合ったり、戦ったりしている文章を見たりしても、もっと自分の実力があったら、こういう事件も起きなかったのかな。

 私は自分で出したコメントでは、自分の体形が好きだって言ったの。今の自分が好きなわけよ、結局。これは別に調子に乗ってるとかそういうことじゃなく、普通に生きているんだもん、この体形で。自分が好きなの、長所でも短所でも性格でもね。私が好きなのよ。演者としての渡辺直美ってなったときに、やっぱり私はこの体形でデビューしているし、この体形で私は表に出ているから。

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 私の見た目で、太っていることじゃないところで見てくれる人もいるし、「デブじゃん、ただのデブじゃん」って言う人もいる。私は重々、理解した上で、自分なりのポジティブな仕事をしてきたつもりなのね。

 だからそういう風なコメントを出したんだけど、だけどそれは一人の表に出る演者としての私のコメント。要は、私はこういう風な体形のことをとやかく言ってくることは、本当に結構どうでもよかったりするのよ、言い方は悪いけど。

 私だけじゃなくていろんな人たちが、時代とともにアップデートしていくわけじゃん。

 だから今はまだ、その変わっている途中。私はこの体のことをポジティブに伝えてきたつもりだった。あと芸人という仕事もね。ポジティブにいろんなことができるんだぞ、と。「芸人のくせに」とか、「デブのくせ」にとかじゃなくて、ポジティブなことを仕事を通して私は伝えてきたはずだった。

 だけど、今回のこの件について、もう一度そこに戻された、というと言い方は悪いんだけど、結構なことだなと思ったの。でも、私をブタにして何かやろうよといった本人が辞表を出して辞めてしまったことに関して、その後に私はコメントを出したから、そこでとやかく言うことではないというか、そこで一つ動いたというかね。

 今回の件でたくさんの人が考えて自分の意見を言うことが、また新しい時代の動きになっているのかなと思ったときに、10年前よりはもっともっと前向きな、もっとポジティブな感じになっているのかなと思う。だけど、今言えるのは、私の意見とかを一番聞いてほしいなと思うのは、正直あります。

 一昨年の年末に、オリンピックの開会式のお話をいただきました。そこで一人のパフォーマーとして出てほしいと依頼をいただきまして、その時は何をするのかも知らなかった。私はもう「ぜひお願いしますー!うれしいですー!頑張ります!」って言って、その1、2カ月後ぐらいに、その演出チームの方々と打ち合わせをすることがあった。そのチームというのが、振付師のMIKIKO先生を含むチームの皆さんです。

 その時、開会式の演出プランを聞いたのね。それを聞いているときに、私はもうめちゃくちゃ鳥肌。かっこよすぎて、「これに私参加していいんですか?」みたいな。熱くて、最高の演出だったんだよね。そういう楽しい、かっこいい演出のままで私の中では終わっていたのね。

 でも、コロナでオリンピック自体が延期。今回の報道で、私をブタに見立てるという報道がきたときに、「あれ?」みたいな。私が最初に聞いてた話と違うなと思ったし、きっと私の知らないところでいろんなことが起きてそういう案が出てきて、みんながそれは無しでしょ、となった。これも私は一つの救いだなと思うけど、どうしてこういうふうになっちゃったのかな。

 今回の報道が海外でも流れてしまった。私はすごい悔しいなと思ったんだよね。元々聞いてた演出が本当にかっこよかったから、却下されたものがこうやって表に出て、これが日本の全てって思われたくないなというのが率直な私の意見です。

 ニュースをちゃんと見ない人は日本が最初からそういう演出をしようとしていたんだとなってしまうのは私の中ではすごくショックだなと思った。元々の演出を知っていた分、本当にかっこよかったからね。みんなに見てもらいたかったし、私も頑張ってやりたかったなというのがあったかな。それの悔しさの方がいま大きい。

 今回の演出に関して私は知らなかった。だけど、コメントとかツイッターのコメントを見ていると、「芸人なんだから、芸人の渡辺直美なんだからぜったいにこのブタという演出も楽しくやってたと思うよ」っていうコメントも結構多かったの。でもね、もしも、その演出プランが採用されて、私の所にきた場合は、私は絶対断っていますし、その演出を私は批判すると思う。目の前でちゃんというと思う。だって普通に考えて、言い方は悪いですけど、面白くなく、意図が全くわからない。これはシンプルに思う。だから、もしそれを出されたら、私は「面白くない、意図もわからないし、ブタである必要性って何ですか」って言っていると思う。これだけは伝えたいんだけど、芸人だったらっていうこと自体も違うからねっていう。今回の案、演出に関して、芸人だったらやるかといったら違うし。

 渡辺直美として昔「太っている」と言われ、それを求められたこともあった。けれども、もっとこの自分の体をもっとポジティブに表現したいとなった。でもそのことを(否定的に)言ってくる人もいる。これはしょうがないことだし、もっと時間がかかると思う。

 この報道でたくさん傷ついたみんな、本当につらかったと思うし、まだまだ私の力が足りないなと、すごく思いました。でも、これで気づいた人もいると思うし、もっとみんながわかりあって、支え合って、理解しあえる世界になった人がいたと思う。難しいけど、これがきっかけで、変わったらいいなと思うし、私はもちろんいままで通り、自分を表現していきたいし、みんなも表現してほしい。自分に自信をもってほしいなと思います。自分のことを愛してほしいし、自分のことをもっと誇っていいと思う。

 「デブと言われたくなきゃ、やせればいいじゃん」と言う人もいるだろうし、そう考える人もいると思う。でも、私は自分で決めたいんだよね。自分が「やせたい」と思う理由がでたらやせるし、自分が「このままでいたい」と思ったら、太ったままでいたい。自分のことは自分で決めたいんだよね。

 自分の髪色は自分で決めるし、自分が着たい服は自分で決めるし、自分の体のことは自分で決めたいんだよね。誰かに心配で「体調大丈夫? やせたら?」と言うのとはまた違う、「おいデブ!と言われたくねえならやせろ」と言われたとするじゃん。そんな人たちに屈したくないというか、決めるのは私、決めるのはあなた自分自身ということを伝えたいと思った。

 体形のことをどうこう言う次元じゃないですよ、もう2020年代に入りましたから。見た目の奥がわかるような人間になりたいと思う。そういうことをわからない人がいたとしたら、私は、頭ごなしに怒って表現することはもうやめたい。教えてあげる。話し合うことがすごく大事なのかなと思ったし、これ以上これが報道されないことを祈る。これを見て傷つく人がいるから。傷ついて欲しくないなと思うし、もうとにかく自分を大事にして欲しいなと思いました。