利用者が8600万人に達するLINE。私もいろいろな人との連絡に利用している。使い勝手がよくて結構重宝している。絵文字の利用も楽しみの一つ。そんなLINEが個人情報の杜撰な管理を暴露された。出沢CEOは深夜に開かれた記者会見で「ユーザーの分かりやすさへの配慮が欠けていた。法的にどうこうではなく、ユーザー感覚でちょっとおかしい、気持ち悪い、というところに気を回せていなかった」(ロイター)と語った。この記事を呼んで「一緒だ」と思った。どこが、誰と一緒なのか。オリンピック・パラリンピック組織委員会の前会長、森喜朗氏。あるいは同組織委員会で開閉会式担当だった統括クリエーティブ・ディレクターの佐々木宏氏(66)。品のない言葉遊びで渡辺直美さんを侮辱した。

一緒だと感じるケースは他にもいっぱいある。例えば、テロやスパイに対する考え方。表面的にはテロやスパイを声高に非難するものの、それを阻止しあるいは防止するための対策はほとんど何もない。私自身もそうだが、日本人の多くはごく身近にスパイがいるとは考えない。これと一緒だと思うのは原発の「安全神話」だ。東日本大震災以前の原発は、関係者が総力で上げて作り上げた「安全神話」によって守られていた。たが、巨大な自然災害に直面してそんな安全神話はいとも簡単に崩れ去った。現実のどこを探しても安全は存在していなかったのである。女性差別、人権侵害がよくないことは誰でもわかっている。だが、知らず知らずのうちに差別用語を口にし、いとも簡単に人権侵害を犯してしまう。LINEも個人情報の重要性はわかっていた。だが、肝心の対策は目先の忙しさにかまけて手を抜いていた。

「自由でオープンな価値観」を共有する西側諸国には人種、人権、差別、思想、宗教などセンシティブな問題が山ほどある。そうした問題に目を背けず真正面から立ち向かう、言ってみればこれが世界の潮流だろう。個人情報の保護もその一つだ。デジタル社会が進化し、個人情報は世界中どこからでもアクセスできる時代になっている。LINEに登録した個人情報には銀行の口座情報なども含まれている。その個人情報に中国の担当者がアクセスしていた。今のところ実害はないようだが、悪意ある担当者が一人いれば大問題になる。サーバーが国外にあること以上に、厳格な管理という意識の欠如が問題だ。出沢氏は「ユーザー感覚に気を回せていなかった」と告白する。仏作って魂を入れない日本方式ともいうべき杜撰なやり方、これが日本の信用を失墜させている気がする。