米政府が中国による台湾侵攻の可能性に危機感を強め、先の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも、日米両政府が「台湾海峡の平和と安定の重要性」について認識を共有した。朝鮮半島だけでなく、台湾情勢が緊迫した場合でも在日米軍が介入すれば、日本も安全保障関連法に基づき、米軍の後方支援を行うシナリオが現実味を帯びる。
防衛省は支援する上で、自衛隊がどのような活動が可能か検討を進める。
台湾有事の可能性をめぐり最近、米インド太平洋軍の高官が「中国は6年以内に台湾に対して武力行使する危険性がある」「大方の予想より迫っている」と相次いで発言。日本を含む同盟国と連携して抑止する重要性を強調した。
米軍が中国をけん制する最前線の海域を担当するのが、横須賀基地(神奈川県)に拠点を置く米海軍第7艦隊だ。同艦隊によると、昨年、西太平洋に派遣された米艦が台湾海峡を通過した回数は13回で、2016年以来、最多を記録。今年も既に3回通過した。
台湾有事に米が介入すれば、約5万人が駐留する在日米軍基地は出撃拠点となる。安保法適用の可能性があるのが、米軍に補給できる「重要影響事態」。日本の平和と安全に重要な影響を与える状況が要件で、日本のシーレーン(海上交通路)での軍事的緊張などが想定される。
日本西端の沖縄県・与那国島から台湾までは、わずか110キロ余り。台湾とフィリピンとの間にあるバシー海峡は、資源の大半を輸入に頼る日本にとって死活的に重要なシーレーンに当たる。
政府筋は「台湾海峡の緊迫の度合いにより、どのような米軍の行動が想定され、支援が可能か米側と詰める必要がある」と話す。
防衛省関係者によると、シーレーン防衛で警戒中の米艦船が攻撃されれば、日本の存立が脅かされる安保法の「存立危機事態」に認定される可能性も排除されない。同事態は集団的自衛権により、自衛隊が武力行使できる3要件の一つだ。安全保障面で米中の対立が深まれば、自衛隊が戦火に巻き込まれるリスクも高まる。