今朝このニュースを見た時「やっぱりそうか」という印象をうけた。色々なメディアに速報が流れているから、どこの特ダネかわからない。最初に見たのはyahooニュース、「東芝・車谷社長辞任、後任に綱川会長復帰」だった。英国の投資ファンドCVCが東芝の全株式を時価の3割増で買い取り、3年後に再上場する提案をしている。この記事が出たのは7日のことだった。その時当欄で「東芝はこれでガバナンスを刷新できるのか?」と書いた。アクティビストの間で対立が続いている東芝の経営陣、非上場化で物言う株主を一掃、経営をスピードアップして成長戦略を盤石にするというストーリーだった。一見すると「さもありなん」と思えるのだが、車谷社長が東芝の社長になる前にCVC日本法人の会長をしていたという経歴が妙に気になった。

今朝の新聞を読むと東芝はきょう臨時の取締役会を開催し、車谷社長が辞任して綱川会長が社長に返り咲くトップ人事の決めるとある。非上場化を裏で画策したと思しき車谷社長の突然の降板である。突然と思うのは事情をよく知らない部外者だけで、関係者の多くは当然のことと受け止めているのかもしれない。指名委員会の調査によれば車谷社長に対する会社幹部の評価は、半数以上が不信任だったという。本来なら6月の株主総会での退任が決定的だったようだ。素人目には、今回の非上場化計画それ自体が、車谷社長自作自演の保身術だったように見える。それはともかくとして、後任の綱川社長は不正な会計操作を発端とする経営危機の処理を担当した人である。アクティビストの資金支援を受けて上場廃止の危機を凌いだのも、稼ぎ頭の東芝メモリーを売却したのも綱川氏だ。

東芝が直面している問題はガバナンスの乱れだ。約60社と言われるアクティビストの資金提供によって経営難を克服したのだが、危機を突破して見えてきたのは船頭多くして意見がまとまらないという現実だ。経営を取り巻く環境はおそらく日に日に厳しさを増しているのだろう。得意分野への資源の集中と瞬時の決断が経営に求められている。そんな中で物言う株主と対立して前に進まない東芝。ファンドによる非上場化の提案もわからなくはない。CVCはこれからも提案を続けるようだし、今朝の新聞によると米国のKKRやカナダのブルックフィールドという投資ファンドも参戦する可能性があると出ている。こうなると投資ファンドの餌食だ。内部通報によって発覚した不正経理、原子力子会社の巨大損失、いずれも経営ガバナンスの緩みに起因する不祥事だ。非上場化によって経営陣を総取っ替えするのも手かもしれない。