米政府が主催する注目の気候変動に関する首脳会議(オンライン)が昨日始まった。会議の冒頭、提唱者であるバイデン大統領は「持続可能な未来に向けて行動すべきだ」と呼びかけた。トランプからバイデンへ。米大統領の交代を象徴する会議だ。気候変動問題で主導権を確保したい米国、複雑な思惑を胸に秘めロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席も参加した。プーチン氏は米国が長年にわたり主要排出国であることを示唆した上で、「はるか昔から地球温暖化やそれに関連する問題を助長する下地が作られていたことは周知の事実」(ロイター)と米国を牽制する。この人は常に米国を意識しているのだろう。この会議でもバイデン氏に一発かましている。だが、プーチン氏の発言などものの数ではない。ここでは各国首脳が大言壮語の削減目標をぶち上げている。

まずはバイデン大統領。「2030年までに温室効果ガスの実質排出量を05年比で50-52%削減する」(同)と宣言した。実現可能性など問題ではない。高い目標を設定して各国にプレッシャーをかけることが目的。それを承知で英国のジョンソン首相は米国の目標を「ゲームチェンジャー(形勢を一変させる)」と称賛した。旧宗主国の英国もいまや米国に忖度する時代。大舞台でさりげなくおべっかを使っている。世界最大のCo2排出国である中国。習近平主席は「26-30年の石炭消費量を21-25年の水準から段階的に削減する」と控え目。強権的な領土拡大意欲に比べCo2削減かいかに難しいか、自覚しているのだろう。それでも従来からの主張である「60年までにカーボンゼロを実現する」と宣言することも忘れなかった。Co2削減で先行するEU。フォンデアライエン欧州委員長は排出権取引制度の対象セクター拡大計画を明らかにした。

菅首相は直前の地球温暖化対策推進本部で決めた目標をこの場で明らかにした。「30年度の温室効果ガスの排出量を13年度との比較で46%削減する」というものである。日本の温暖化対策はこれまで現場からの積み上げ方式を採用していきた。現実に見合った削減量を目標にしていた。世界の首脳の大風呂敷に比べれば実現性は高いが、アピール度は低い。このため世界中から後ろ向きとバッシングされることも。そこを慮ったのだろう、菅首相は政治主導で大幅に目標値を引き上げた。このため「現実感のない数字が独り歩きする」(日経新聞)との指摘も関係者の間で燻っている。科学者の間では「地球の環境はすでに限界を超えている」という見方が支配的だ。そんな中での菅首相の政治決断。いや、日本だけではない。世界中の首脳が難しいことを承知の上で大目標を掲げている。環境問題はもはやできるか、できないか、ではない。大ボラでも大言壮語でもいい。瓢箪から駒を期待するしかない。