菅政権になって初めての国政選挙で与党が完敗した。北海道2区(衆院)と広島(参院)は金権政治の是非。長野(参院)は前任者のコロナによる急逝を受けた弔い合戦。自民党は北海道で候補者擁立を見送った。与野党の対決は残りの2つ。長野は元々野党の強いところ。問題は保守色の強い広島で自民党が敗北したことだろう。保守色が強いとはいえ、河井夫妻の金権体質を長々と見せつけられてきた有権者にとって、与党を拒否するのは自然の流れだ。自民党は負けるべくして負けた。ただそれだけのことでしかない。この選挙によって立憲民主党を筆頭に野党がいきなり政権に躍り出ることもないだろう。一向に収束しないコロナの感染状況を見ていれば、与野党含めて政治への期待感はまるでない。それを立証しているのが投票率。北海道が30%、広島が33%と超低い。弔い合戦の長野だけが44%、高いわけではない。“普通”の低さだ。
今回の選挙の結果を見て文春オンラインの記事を思い出した。共同通信の元記者・黒田勝弘氏が書いたもの。タイトルは「文在寅『左翼積弊清算で投獄』の危機…ソウル&釜山市長選惨敗は韓国政権交代の序章である」。この中に次の一節がある。長くなるが引用する。「今回の与党惨敗を伝える米国のニューヨーク・タイムズがその敗因として『naeronambul』という言葉を挙げていたと、韓国で話題になっている。韓国通には周知の韓国語『ネロナムブル』の英語表記だが、これは『自分(ネ)がやればロマンスで他人(ナム)がやると不倫(ブルユン)』を略したもの。『積弊清算!』といって、他者には限りなく厳しいが自らには限りなく甘いダブルスタンダードの価値観、つまり偽善や唯我独尊、独善、ゴーマンを皮肉る政治的な“俗語”で、近年、韓国政治によく登場する。文政権に対する民心の離反の最大原因はこれだったというのだ。韓国世論は『ネロナムブルは文政権のおかげでついに国際語になった!』と自嘲している」
日本の政治を見ていつも感じるのはこの「ネロナムブル」ということだ。自分に優しく他人に厳しい。身近にあるのが新型コロナの感染防止策だ。菅首相をはじめ小池都知事や都道府県知事など政治家の多くは、感染防止対策として国民に自粛を求めている。小池都知事に至っては「東京に来るな」と国民を恫喝する。感染対策に特効薬がないことは百も承知している。それでも言いたくなる、「国民に求めるだけで感染は防止できるのか」。もう1年がゆうに過ぎた。この間、政府、官僚、専門家、与野党の国会議員から発せられた言葉の大半は「自粛要請」と「医療の逼迫」、極端に言えばこの2つだけだ。国民に寄り添うと言いながら「上から目線の強制的な自粛要請」と「医療を守れ」の大号令。目に見えないところで政治家や自治体の職員が必死に戦っていることはわかっている。それでも言いたくなる。「君たちは何をしているのだ」。
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