元徴用工訴訟のソウル中央地裁判決を受け、取材に応じる原告側=7日、ソウル(共同)
元徴用工訴訟のソウル中央地裁判決を受け、取材に応じる原告側=7日、ソウル(共同)

【ソウル=時吉達也】いわゆる徴用工をめぐる7日のソウル中央地裁判決は、同地裁で4月、元慰安婦らの請求を却下する1審判決が出されたのに続く日本寄りの司法判断となった。裁判所が異例ともいえる手続きにより、日韓政府間協議への影響を回避しようとしている形だ。しかし、今回の判決は韓国最高裁の判例からも踏み出した内容で、係争中の同種訴訟に波及するかは全く見通せない。

今回の訴訟では5月28日の第1回口頭弁論で、原告・被告双方が求めた審理の延長に地裁が応じず、今月10日の判決期日を指定。さらに7日、原告一人一人への連絡なしに期日を急遽(きゅうきょ)変更し、判決を言い渡した。原告らが法廷で判決に不満を爆発させるのを避けたとみられ、韓国紙記者も「期日前倒しは聞いたことがない」と驚きを隠さない。

ソウル中央地裁が1月、日本政府に元慰安婦への賠償を命じた判決に対しても、同地裁が異例の手続きを行った。地裁の別の裁判官らが4月、職権で判決内容を事実上一部変更し、訴訟費用確保のための資産差し押さえを認めないと決定したのだ。この判決は賠償命令自体を有効としつつ、資産差し押さえは「わが国の司法への信頼失墜を招く」とクギを刺した。

徴用工訴訟ではすでに最高裁判例が存在し、やはり5月下旬に弁論が始まった同種訴訟では、「門前払い」を避けて審理を延長する姿勢を示している裁判官もいる。各訴訟の結果次第で混乱が広がりそうだ。