きのう、沖縄県を除いて緊急事態宣言が解除された。きょうからはまん延防止等重点措置が適用される。あわせて企業や大学などでワクチンの職域接種が本格的に始まる。感染防止に向けた切り札、ワクチン接種のスピードアップに向けて全国の自治体や企業、大学が動き出す。「文句は言いません、接種が終わるまで」、なんとなく戦前の挙国一致を連想させるような雰囲気が日本中に漂っている。オリパラの開幕が1カ月後に迫っている。ようやく日本にも一致団結して前進しようとする兆しが見えてきた。内心ホッとした矢先だった。昨日のNHK、夜7時のニュースで表題のニュースが流れてきた。「北海道 釧路 大規模接種開始 医師の一部は日給17万円余で確保」との内容。医療逼迫の中でワクチン接種の人材を確保するのは大変だっただろう。最初は同情した。だが、釧路市は日給17万5000円で必要な人材を確保したと胸を張る。

医師のアルバイト料が急騰しているというニュースは、以前日経新聞でも読んだことがある。医療従事者を斡旋する人材派遣業者の説明によると、医師免許を有している医師の日給は今年に入って13万円(昨年までは10万円程度)を超えているとあった。あれは5月ごろの記事。わずか1カ月足らずでそれが17万円超に跳ね上がっている。菅首相が政治生命をかけた「1日100万回接種」の大号令によって相場が跳ね上がったのだろう。釧路市は「今月21日から25日と、28日から来月2日の平日の10日間は、日給17万5000円で道内外から募集し、必要な延べ70人を確保した」(NHK)という。蝦名大也市長は「高額の日給については、まさに『需要と供給』ということだ」と話している。ワクチン接種に必要な費用は全額国が負担する。税金から支払われるわけだ。当初は10万5000円で募集をかけたが集まらず、日給を引き上げた途端に募集が殺到した。

同じことは全国で起きているのだろう。国が負担するといえば元は税金だ。貧相な納税者にすぎないが、この事態をどう理解すればいいのだろうか。エッセンシャルワーカーである医師にイチャモンをつけるつもりはない。何かにつけ医療の逼迫を強調する感染症の専門家、政治家、医師会、コメンテーター、メディア等々は疑問に思わないのだろうか。本当に医療は逼迫しているのか。「カネを出せば医師は集まる」、こういう現実が国家の緊急事態の裏で静かに進行しているのだ。自治体の要請に応じて営業停止に応じた飲食店に支払われる協力金は、緊急事態宣言中に限り1日あたり6万円に過ぎない。無償で被災地に駆けつけるボランティアのような崇高な精神は日本の医師には存在しないのだろうか。日本医師会は名うての圧力団体だ。医療逼迫と声だかに叫ぶ裏に既得権確保の思惑があるとすれば、エッセンシャルワーカーの名が廃る。