東京都の小池知事がきのう、過労を訴えて入院した。今週一杯静養に努めるという。国内で合宿中のウガンダ選手団から2人目の陽性者が確認された。そしてオリパラの選手村がメディアに公開された。選手村でクラスターが発生したらどうなるのだろう、懸念が懸念を呼ぶ。都庁周辺では東京五輪の中止を求める市民デモが繰り広げられた。人流が拡大すれば陽性者が増える。最も被害を受けるのは周辺住民だ。市民にとって「安全安心」を訴える手段はデモぐらいしかない。その気持ちは理解できる。東京都の感染者はきのうまた増えた。宣言解除後、感染者は徐々に増えている。これが収まらなければ、再度宣言を発令する事態も想定される。これが都知事の過労に拍車をかけた一因かもしれない。何はともあれ大事に至らないことを願うしかない。
一方でワクチン接種は急ピッチで進んでいる。職域接種の申し込みもかなりの数になっているようだ。いったん方針が決まれば一致団結して前進する。これは同調圧力か世界に誇れる日本人の良い意味での特質か。切り札がワクチンという状況の中では良い面が出た。申し込み急増でワクチンの手配が間に合わなくなっているようだ。河野担当大臣は職域接種の申し込みをいったん中止すると発表した。需要に供給が追いつかなくなる危険性が出てきたという。「供給を上回る需要」久しぶりに聞いた日本語のような気がする。五輪組織員会はこうした状況の中で、メディアを通して「安全安心」の説明に取り組み始めたようだ。情報番組でコメンテーターなどが「安全安心」の根拠を示せと、ワンパターンのコメントをしている。こうした批判に答えようとしているのだろう。努力は買うが無駄な気がする。
個人的な記憶を辿ってみても、日本人はこれまでいくつかの“国難”を乗り越えてきた。その昔、オイルショックで狂乱物価が日本中を覆い尽くした。コンビニやスーパーの商品棚はどこもかしこも空っぽ。去年のマスク騒動よりはるかに規模が大きかった。「全治3年」と言った当時の福田首相の苦虫を噛み潰したような顔を思い出す。だが、3年を待たずに事態は沈静化した。震災も相次いでいる。淡路神戸大震災に東日本大震災、近くは熊本地震など。巨大な災害も国民一丸となって乗り越えてきた。こうした過去を振り返れば、コロナ禍での開催となる今回のオリパラも、なんとか乗り越えられるのでは。個人的には楽観している。だが今回は、圧倒的に世論が反オリパラに傾いている。これに対して政府も組織委員会もIOCも、明確に五輪開催の理屈付けができているわけではない。「安全安心」が唯一の砦だが、メディアの報道を見る限り先行きは厳しそうだ。この先の2カ月、日本は踏みとどまれるか?
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