3日に熱海市で発生した土石流は、上流の盛り土崩壊による人災の可能性が高まっている。毎年のように起こる集中豪雨や河川の決壊は、異常気象に耐えられなくなった森林や河川で起こる自然災害かと思っていた。しかし、熱海で起こったケースは自然災害というよりも人災と考えた方が良さそうだ。災害発生からきょうで3日目。専門からの指摘によると原因は、逢初川上流で行われた盛り土の崩壊に起因しているようだ。盛り土造成に詳しい関東学院大学の規矩大義教授によると、「地盤と盛り土の接続部分に水がたまりやすく、大雨が降った場合、不安定になって崩れやすくなる。こうした盛り土が行われている場所は全国に広がっていて、どこでも同じようなリスクがあると考えてほしい」(NHK)と警告する。危険は日本中に広がっているということだ。

メディアも土石流の原因を連日にわたって報道している。日経新聞(Web版)によると「県や専門家は、最上流部にあった盛り土が崩れ落ちたとの見方を示している」。静岡県によると、「土石流の最上流部には約5.4万立方メートルの盛り土があり、そのほとんど全てが崩落したとみられる」とのことだ。新聞やテレビで崩壊の起点と見られる最上部の映像が公開されている。抉り取られた現場の写真を見ると黒い土と茶色の土が混ざっている。産業技術総合研究所・地質調査総合センターの及川輝樹主任研究員は崩落面の黒い土が「おそらく盛り土」(日経新聞)と指摘する。「この辺りは溶岩などの火山噴出物が多く、長く地表にさらされて風化すると茶色くなる」と説明。「(本来)黒い土は見られない」ことから、崩壊面に残っている黒い部分が盛り土だと推測する。

盛り土が崩壊するプロセスについて専門家が詳細に解説している。そうした解説を見るにつけ地盤工学とか地質学、土木工学といった専門分野の研究が日進月歩で進歩している様子を窺い知ることができる。だがそうした知見は現場で生かされているのだろうか、ふっと疑問に思うことがある。静岡新聞によると「県土採取等規制条例は面積千平方メートル以上、体積2千立方メートル以上の土地改変を行う場合、県に届け出をするように定めている。ただ、全国一律で盛り土を規制する法律はない」とある。日本は国土の7割弱が森林に覆われた“森の国”である。その国の自然が人為的に無造作に改変されている。盛り土は悠久の時を経て形成された自然の摂理を無視しているのだろう。明らかに人災だ。川勝知事は「雨が直接的な要因であり、開発との因果関係は明確ではないが、今後検証したい」(静岡新聞)と表明した。