6月の米CPI(消費者物価)は前年同月比5.4%増と大幅に上昇した。5月の5.0%を上回った。ロイターによるとこれは2008年8月以来、約13年ぶりの大幅な伸びだそうだ。前月比でも0.9%上昇、前月の0.6%を上回り、08年6月以来の大幅な伸びとなった。上昇分の3分の1以上が中古車・トラックによるもの。コロナ禍で新車需要が急回復しているが、半導体不足で新車の供給が追いつかず中古車市場に消費者が殺到したわけだ。トラックは運送需要の回復に供給がいつかず、価格上昇を招いている。問題はこれが一時的なのか、長期化するのか、解釈の問題である。市場は長期化を懸念、これに対してFRB(連邦準備制度)は一過性であり、いずれ収まると主張してきた。お上に楯突いても勝ち目がないのが市場。FRBの主張にすり寄る形で波乱を抑え込んできた。
メディアもほとんどがFRB寄り。バイデン大統領支持に回った昨年の大統領選挙のような雰囲気だ。ロイターは反響原稿でJPモルガン(ニューヨーク)のチーフ米国エコノミスト、マイケル・フェロリ氏の見解を引用している。「このところのインフレ高進は一部の部門のみに牽引されている。物価上昇はおおむね一過性のものとするFRBの見方を裏付けるもので、市場もこうした見方を共有している」。ブルームバーグもバンク・オブ・アメリカ(BofA)の米経済担当責任者、ミシェル・マイヤー氏の「これは(FRBの)一過性のインフレという見方を補強する」とのコメントを支持している。ただ最近FRBが若干インフレタカ派の姿勢を示していることを受け、「生産面の制約長期化などを背景に、消費者物価のインフレが加速するリスクも高まっている」との懸念も付け足している。これは保険だろう。
これに対して日経新聞はインフレ長期化懸念をやや前面に押し出している。「米インフレ、ちらつく長期化の影 住宅や賃金に伸び波及」と題した記事で、米国経済の基調変化の兆しを嗅ぎ取ろうとしている。一つは前月比の上昇率が加速している点。CPIは5月(+0.6%)にいったん鈍ったが、6月は+0.9%に再び拡大した。前月比が加速すると前年比の上昇幅が落ち着くのに時間がかかる傾向がある。もう一つは住宅費や賃金など一過性でない項目の上昇率が目立ちはじめていること。帰属家賃や賃金に上昇が波及すると、インフレは長期化する傾向がある。現時点では一過性か長期化か、断定的な判断は無理だろう。個人的にはコロナの前と後では、経済の構造が変わるのだと思う。これに気候変動対策が加わる。需要は回復するが供給にはブレーキがかかる。とすればインフレ長期化ということになるのだが・・・。
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