<東京オリンピック(五輪):卓球・日本0-3中国>◇5日◇女子団体決勝◇東京体育館
女子団体で日本が12年ロンドン五輪以来の銀メダルを獲得した。決勝で中国に0-3のストレート負け。石川佳純(28=全農)、平野美宇(21=日本生命)ペアがダブルスで初戦を落とすと、続く伊藤美誠(20=スターツ)もエース対決で敗戦し、そのまま流れを逃した。同種目のメダルはロンドンの銀、16年リオデジャネイロ五輪の銅に続き3大会連続となった。
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先輩からバトンを受け継いだキャプテン石川が、9年前の雪辱にかけた。いずれ引き継ぐ2000年生まれの平野、伊藤とともに。平野早矢香がロンドンで、福原愛がリオで成し遂げられなかった金メダルを本気でつかみにいった。
それでも力の差は歴然だった。世界ランキング9位石川、同12位平野は1番手ダブルスで同1位陳夢、同4位王曼■(■は日の下に立)ペアとの第1試合を落とす。2番手の同3位伊藤も同2位の孫穎莎に敗戦。他国相手なら決まっているはずの球も拾われ続け、日本が力尽きた。
「ロンドンでは準決勝を勝つことが目標だった。でも東京では決勝で中国に勝つと意識して準備した」。日本卓球界を背負い続け、メダルを3大会連続で守り続けた石川。「10年間トップレベルで続けてこられた。少しは自分を褒めてもいいのかな」と目を潤ませた。
3人が生まれる数十年前、日本の黄金期があった。前回の東京五輪の前後、1950年代から70年代にかけて世界選手権優勝の常連国だった。71年名古屋大会では「ピンポン外交」が行われた。卓球を通じて朝鮮戦争以来、敵対していた米中の緊張緩和を実現し、さらには翌年の日中国交正常化にもつながった。最後に日本が団体戦で世界一に輝いたのは、そんな時代だった。
半世紀の時を超えて開かれた東京五輪。石川は開会式で日本選手団の副主将として選手宣誓を行った。正式オファーの前、自身の名があるとうわさで聞いたが、報道では違う選手の名がいくつも浮上。母久美さん(57)は「競技が始まれば、みんな開会式のことは忘れるわよ」となぐさめたが、思いは違った。「みんなが忘れるとかの問題じゃない。宣誓をしたら自分自身の心にずっと残る」。
新たな時代を築こうとする意識が常にあった。「結婚しても卓球は続けたい。それに縛られず卓球を楽しくやりたい」。現代社会を体現する考え方を「ずっと思っていた。やっぱり女性は結婚したら辞める方も多い。でも私は続けたい。私自身、そうであってほしい」。
パリ五輪を目指すかは「本当に分からない」。この10年で団体のメンバーは8学年後輩に。「すばらしい先輩とも、すばらしい後輩とも団体戦を戦えたこと、すごく幸せだった」。石川が守り続け、銀メダルでつないだ東京五輪。3年後、打倒中国を果たす選手たちが再び、そのバトンを手にコートに立つ。【三須一紀】
○…日本女子の馬場美香監督は中国にストレート負けした点に「技術の習得も大事だがメンタル力や勝負強さなど、個の能力を高めることも必要だ」と述べた。長いラリーになった際、最後に日本がじれてミスする場面が目立ち「日本はサーブからの3球目を狙っていたが、そこをしのがれてラリーになり最後は日本がやられた。そういった部分も改善しないといけない」と語った。
※■は日の下に立