東京五輪2020がきのう閉幕した。コロナ禍での強行開催、1年延期された上、無観客という異例の祭典だった。日本選手団の獲得したメダルは金が27個、銀が14個、銅が17個の合計58個。史上空前のメダルラッシュだった。特に目立ったのは新しい種目での若い選手の活躍だ。今回初めて正式種目として採用されたスケートボードは、出場選手の多くが10代のアスリートだった。テレビ桟敷の観戦にすぎないが、選手はいずれも国とか国境を意識していないようにみえた。競い合いながら助け合う、古い世代のイメージからかけ離れたところで臆することもなく、楽しそうに和気藹々と戦っていた。見えないところで人知れずお努力していることは当然だとしても、試合前後のパフォーマンスは日本人離れしていた。卓球、女子バスケット、柔道など独創的な試合運びも目についた。特に女子バスケットの「小さい体でも勝てる」戦い方は、アスリートの世界に旋風を巻き起こしそうな気さえした。

開幕前は国民の大半が反対していた。その意味では全競技を無事終了できたことが、本大会の最大の成果だったかも知れない。オリンピックはこの先もずっと続いていく。コロナ禍という前代未聞の危機的状況の中、無観客だったとはいえ全種目をつつがなく終了できたことが、東京五輪の最大のレガシーになるだろう。コロナ禍での開催の是非、五輪そのものに対する不満など、オリンピック開催の賛否はいろいろあるだろう。のちの世代の参考にするためにも今大会の詳細な運営記録を残してほしい。24日のパラリンピック開幕に向け多少の時間的余裕がある。この間に賛成派も反対派もこの大会の評価をきちっと出して欲しい。来年2月には北京五輪が迫っている。3年後にはパリ五輪が開催される。高温多湿な真夏の日本での開催は、アスリートに過酷な負担を強いた。開催時期はアスリート優先にすべきだ、以前から思っていたことをこの大会で改めて確認した。

国内では総選挙に向けた論戦がこれから本格的に始まる。日本選手の活躍の影にかくれていたものの、感染者の数は指数関数的に増えている。五輪とコロナに政治が絡んで、これからしばらく非生産的な議論が進むだろう。8日付のAERAには「コロナ下で強行開催された東京五輪が8日、最終日を迎えた。コロナ対策だけでなく、数々の問題が噴出した五輪だった。失敗の根本原因は何か」との記事が早速掲載された。投稿者は大阪市立大学大学院経済学研究科准教授の斎藤幸平氏。五輪失敗の主張が早くも登場している。同氏は「脱経済成長」論者。スポーツそのものを否定しているわけではないが、五輪の失敗を印象付けようとする姿勢はいかにもAERAらしい。五輪には様々な問題が付随している。五輪から政治色を取り除くのは至難の技だろう。斎藤氏の五輪に絡めた脱成長論も理念が先行し過ぎていて、いまひとつ説得力に欠けている気がする。