- 投資家は国営メディアの批判を受けた業界の株を手放しつつある
- 「締め付けはほんの始まりに過ぎない。ただの序章だ」との声も
中国の習近平国家主席が進める民間企業の締め付けではどの産業が次のターゲットになりそうか、投資家は手掛かりを探している。同時に別の疑問にも直面している。なぜ今なのかだ。
中国の指導者は過去数十年にわたり、マルクス主義や社会主義、労働者階級の美徳をたたえてきた。その一方で高度経済成長を監督し、時価総額で世界最大規模の企業を誕生させた。習氏は2期目の政権をスタートさせた2017年、中国の主要な問題は「不均衡かつ不十分」な発展だと指摘し、その解決に「多大なエネルギー」を注ぐことを求めた。
それでも過去1年の民間セクターに対する締め付け強化には、多くの人が驚いている。投資家は今や、オンラインゲームや電子たばこ、不動産や粉ミルクに至るまで、国営メディアが批判の矛先を向けたあらゆる業界の株を手放しつつある。
民間企業への締め付けが5年前や10年前でなく、今起こっている理由を説明するには、特に2つの要因が挙げられるだろう。1つは、米国とのイデオロギー面での対立が深まる中での自立推進だ。もう1つは、2022年に開かれる5年に一度の共産党大会に向け、習氏自身が狙う権力基盤の恒久化だ。
上海政法学院の元教授で、中国の統治モデルに関する著書を共同執筆した陳道銀氏は、「習氏の頭の中では、西洋が没落、東洋が隆盛しつつある」と指摘。「来年の党大会で3期目を阻む勢力がほぼ見当たらない中、習氏を止めることは不可能だ。習氏にとって、締め付けを始めるのには絶好の機会だ」と述べた。
オックスフォード大学のラナ・ミッター教授(中国政治)は、「腐敗や既得権益を取り締まる姿は、習近平氏が自分の任期を特徴付け、権力継続を正当化するための強力な手段となっている」と分析。「大きな企業への締め付けによって息をつけるようになる新興企業が増え、全体的には経済を押し上げると共産党は計算している」と語った。
始まりに過ぎない
「締め付けは始まりに過ぎない。ただの序章だ」。北京の調査会社プレナムでパートナーを務めるフォン・チュチョン氏はこう語る。共産党としては「不平等を生み出している元凶にまず歯止めをかけたい」意向だという。
現時点では、習氏がどこまで締め付けを進めるつもりかは分からない。金融サービスや教育、医療、不動産など、国益に関わると判断されたあらゆる分野が次の標的になる可能性がある。
今のところ、習氏の動きは大部分で世論の後押しを受けている。中国には民主的な選挙はないが、調査会社トリビアム・チャイナの共同創業者トレイ・マカーバー氏によると、共産党指導者は政策が不人気になれば調整に動く公算が大きい。「これらの行動に対する不満が広がり始めれば、すぐに軌道修正されるだろう」と同氏は述べた。
原題:Ever-Powerful Xi Finds ‘No Better Time’ to Humble China Tycoons(抜粋)