新型コロナウイルスの感染者数が1週間以上連続して全国で1万人を超えるなど急激な感染拡大が続く中、対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれました。

現在の状況について、「もはや災害時の状況に近い局面を迎えている」として、医療のひっ迫で多くの命が救えなくなるという強い危機感を示したうえで、お盆などの帰省は延期し、すでにワクチンを接種した人を含めてマスクなどの基本的な感染対策を徹底する必要性を強調しました。

11日開かれた専門家会合では、全国の感染状況について、「全国のほぼすべての地域で新規感染者数が急速に増加し、これまでに経験したことのない感染拡大となっている」と分析しました。

そのうえで、これまで低く抑えられていた重症者数が急速に増加し、入院調整中の人の数も急速に増加するなど、首都圏を中心に公衆衛生や医療の体制が非常に厳しく、「もはや災害時の状況に近い局面を迎えている」と強い危機感を示しました。

地域別にみると、東京都では過去最大規模の感染拡大で入院患者、重症者ともに過去最多の水準となり、自宅療養の患者も急激に増加しているほか、新たな入院の受け入れ、救急搬送が困難なケースや、一般医療を制限する事態も起きているとしています。

また、埼玉県、千葉県、神奈川県でも重症病床の使用率が増加していて、東京では夜間の人出の減少も前回の緊急事態宣言時の水準には届かず、20代や30代だけでなく、重症化するリスクの高い40代や50代の割合も高くなっていて、首都圏では当面は感染拡大が続くと指摘しています。

沖縄県は人口あたりの感染者数が全国で最も高く、過去に例のない水準となっていて、入院患者数が急速に増加し、病床使用率が厳しい状況となっている一方、夜間の人出は減少に転じているとしています。

大阪府でも、急速な感染拡大が続き、入院者数や重症者数も増加していて、夜間の人出は減少に転じたものの依然多いため、感染拡大が続くことが予測されるとしています。

専門家会合は、感染力が強い変異ウイルス、デルタ株への置き換わりが進む中、緊急事態宣言などによる人出の減少は限定的で、これまでに経験したことのない感染拡大の局面を迎えているとしたうえで、医療体制の拡充も限界があるため重症者数の急速な増加で「多くの命が救えなくなるような危機的な状況さえ危惧される」と、これまでにない表現で強い危機感を示し、一刻も早く感染拡大を抑えることが必要だと訴えました。

そのうえで、専門家会合は、必要な対策としてお盆や夏休みにも県境を越える移動や外出を控え、帰省は延期を検討するよう求めました。

また、感染が飲食の場面だけでなく、商業施設や職場、学校などでも急速に広がっているとして、ワクチンを接種した人も含めてマスクの着用や消毒、人との距離の確保や換気などの基本的な対策を徹底すること、それに職場での会議は原則オンラインで行うことやテレワークの推進症状のある人の出社自粛の徹底などを求めています。

さらに、最近承認された重症化を防ぐ効果が期待される抗体医薬の活用や、重症化に迅速に対応できる体制を早急に整備して、必要な医療を確保する必要性を指摘しました。

【脇田座長「“災害医療に匹敵する状況”との意見も」】

厚生労働省の専門会合のあと脇田隆字座長が会見し、医療体制の現状について、「非常に厳しい感染状況が続き、今後、新型コロナの医療と一般医療の両立ができるのか、両立が難しい場合にどちらを優先すべきかといった、これまでは出たことのない議論があった。当然、できるかぎり一般の医療も犠牲にせずにコロナの医療も進めていく体制を作らなければならないが、そのためには感染者をできるだけ減らす必要がある。すでに一部では、救急医療にアクセスできない危機的な状況にあり、『災害医療に匹敵する状況ではないか』と表現するメンバーも複数いた。専門家の危機感を一般の方々と共有できていない現状がある思う」と話していました。

そのうえで、「東京都内の夜間の滞留人口のデータ分析によると若い世代だけでなく、比較的、重症化のリスクが高い40代や50代の人流が多くなっている。新型コロナウイルスはインフルエンザとは違って感染した人の数%が死亡するような感染症で、致死率が低い病気ではない。自分や大切な家族を守るために感染リスクを避ける行動をとってほしい」と呼びかけました。

東京都内では、新型コロナウイルスの感染の急拡大で入院患者が過去最多を更新し続けていて、都は病床をさらに増やすため調整を続けていますが、医療機関からは人員の確保が難しいなどといった厳しい声もあがっていて、さらなる病床の確保は難航しています。

11日の時点で、都内の入院患者は3667人となり、5日連続で過去最多を更新したほか、都の基準で集計した重症の患者も197人で過去最多となっています。

都は、新型コロナウイルスの患者を受け入れるための病床を現在、5967床確保していますが、さらにおよそ400床増やしてこれまでで最多となる6406床に引き上げたい考えです。

都は、医療機関に対して、通常医療の制限を視野に、今月6日をメドとして病床の追加の確保を要請していましたが、11日の段階でまだ、調整が続いています。

都によりますと、医療現場からは人員の確保が難しく通常の医療との両立ができなくなるなどといった厳しい声もあがり、さらなる病床の確保は難航しているということです。

都内の医療提供体制のひっ迫がさらに進む中、専門家の中には「災害時と同じ状況だ」という声もあり、都は病床の確保を急ぐことにしています。