新型コロナの感染拡大が止まらない。インド型変異株・デルタ株の猛威になす術もないといった状況が続いている。日本だけではない。世界中がこの変異株を前にたじろいでいる。これといった感染防止対策が見当たらないのだ。きのう、感染対策について政府に助言する厚生労働省の専門家会合が開かれた。会議後に行われた脇田隆字座長の記者会見を含めメディアが取り上げている。NHKのWeb版に長めの記事が掲載されている。タイトルは「専門家会合『多くの命を救えなくなるような危機的状況危惧』」。個人的には専門家会議に具体的な対策の提示を期待しているのだが、3密回避にマスク、手洗いと耳にタコができるほど聴きなれたいつもの対策以外に目新しいものはない。NHKは専門家の危機感を鸚鵡返しに繰り返すだけ。連綿と続くオオカミ少年報道だ。これでは人流は減らないし、デルタ株は我が物顔に勢力を拡大するだろう。

不要不急の外出を避け、3密回避とマスクに手洗い。完全に習慣化した感染予防対策を講じながらワクチン接種も完了。それでも相変わらず自宅に引きこもっている自粛派からみれば、現状はいかにも歯痒いことばかりだ。高齢者は政府や専門家会議の打ち鳴らす“警鐘”に比較的すなおに従っている気がする。しかし、最近の感染の主流である若い世代、中でも20代や30代、ことによると40代も含めてかもしれないが、こうした世代には政府や専門家が繰り返し強調する危機感がほとんど伝わっていない。20代や30代の若い世代の多くが新聞を読まないし、テレビのニュースもほとんど見ない。ひょっとすると感染が急拡大しているという事実も知らないのではないか。たまに新聞を読んでも専門家会議の警鐘はいつもの繰り返しで、真新しいものはほとんどない。メディアも疑問を挟まず連動しているだけ。何をどうしろというのか、専門家会合の危機感は若者にはほとんど伝わらない。

NHKによると専門家会合は「重症者数が急速に増加し、入院調整中の人の数も急速に増加するなど、首都圏を中心に公衆衛生や医療の体制が非常に厳しく、『もはや災害時の状況に近い局面を迎えている』と強い危機感を示しました」とのことだ。このままの状態が続くとコロナと一般医療の両立は難しくなると懸念する。これもいつものパターンだ。では一体コロナはどこで感染しているのか。「飲食の場面だけでなく、商業施設や職場、学校などでも急速に広がっている」と説明する。感染防止対策は?3蜜回避にマスクに手洗い。新たな危機対応は何もない。そうじゃないだろう。「ロックダウンの法整備」、「ワクチンの大都市重点配分」、「医療機関の連携強化」など、どうして国民ではなく政府や自治体、官僚に医療関係者対する要望や要請を行わないのか。若い世代は「また同じことを言いっている」と感じる。コミュニケーション・ギャップが埋まらないのだ。