千葉県で起こったコロナ感染妊婦の「救急車たらい回し事件」は、医療逼迫の実態を象徴する事件だった。メディアの多くがこの問題を取り上げており、感染者急増が生み出した悲劇であるかのような報道をしている。本当にそうなのか?ダイヤモンドオンラインが本日付で配信した記事を読むと、そこには我々一般市民には知り得ない「不都合な真実」が隠されている。事実は複雑であり、この短いコラムの中ですべてを抉り出すのは至難の技だ。誤解を恐れずに言ってしまえば、医師会をはじめ診察・診療にかかわる医療関係者の“未必の故意”が生み出した悲劇にみえる。問題はこの悲劇が医療従事者にとどまらないことだ。日本中に“未必の故意”、あるいは見てみぬふりをする“不作為”が溢れている。これが日本低迷の本質的な原因かもしれない。

ダイヤモンドの記事は「東京都医師会がコロナ医療に総力戦、方針転換の背後にある『不都合な真実』」とタイトルされている。ライターはフリージャーナリストの窪田順生氏。東京都医師会の尾崎治夫会長が8月13日の定例会見で、都内全域で、自宅療養者・待機者に対して「地区医師会・往診専門医・在宅専門診療所・訪問看護」などで24時間見守り体制を導入すると発表した。これは「不都合な真実」の冒頭の書き出しだ。昨日も書いたが何をいまさらという気がしないでもない。それはともかく、自宅療養中のコロナ患者の容態が急変し重篤になる事例が相次いでいる。これに都の医師会が総力をあげて対応しようと動き始めたというわけだ。「総力戦」、願ってもないことだ。東京都民ではないがコロナ不安に苛まれている住民にとっては願ってもない動きだ。「コロナは専門の大病院に任せ、一般診療に専念する」。都医師会の方針の大転換がようやく実現する。

都医師会の背中を押したものは何か。窪田氏は2月に成立した「改正感染症法」と「救急車のたらい回し事件」ではないかと推測する。新感染症法は正当な理由がないまま救急車の受け入れを拒否する医療機関は名前を公表すると定めている。このままでは医師会の沽券に関わる。コロナ禍で批判を浴びるのは得策ではない。ここはひとまず矛を納めよう。そんな意図が働いたのではないだろうか。医師会を貶める邪悪な解釈との誹りを受けるかもしれない。記事に戻ろう。総務省消防庁の資料によれば、「搬送困難事案件数」は令和元年にも995件ある。もちろんコロナ禍で件数は急増しているが窪田氏はそうではないという。これは「平時から起きている構造的な問題なのだ」。国民の命を守るべき医療機関が、「救急車のたらい回し」という重大案件をもう何年も放置している。そこに医療先進国の「不都合な真実」が隠されている。同氏は「医療資源の再編」を提唱する。それ以上に個人的には、医師会の権益を放棄する「意識改革」が必要な気がする。