26日、アフガニスタン首都カブールの空港付近での爆発後、病院に搬送された負傷者(AP=共同)
26日、アフガニスタン首都カブールの空港付近での爆発後、病院に搬送された負傷者(AP=共同)

【ワシントン=大内清】アフガニスタンの首都カブールでの自爆テロは、仇敵である米国とイスラム原理主義勢力タリバンが、在留米国人らの退避プロセスで実質的な協力関係を結ぶ中で発生した。実行したとみられるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」傘下の「ホラサン州」(IS―K)には、対米ジハード(聖戦)の成果を誇示することで競合するタリバンの正統性をおとしめて混乱を助長するとともに、米国とタリバンの不信を増幅させる狙いがある。

アフガンでは、今月15日にタリバンがカブールを制圧して以降、米国人をはじめとする在留外国人や、タリバン支配を恐れるアフガン人らの退避が本格化。撤収期限の8月末が迫るなかで米国は、タリバンとの間で、外交団や軍のレベルで「日常的な連絡態勢」(国務省)を構築した。

背景には、「脱アフガン」を円滑に進めたい米国側と、外国勢力を国内から排除して早期に支配を確立したいタリバンとの利害の一致がある。タリバンとしては今後の政権運営をにらみ、米欧に恩を売る狙いもあるとみられる。タリバンがアフガン人の出国を認めないとするなど両者の隔たりは大きいとはいえ、限定的な協力関係が生まれているといえる。

これに対し、米国とタリバンの双方を敵視するIS―Kにとっては、今回のようなテロで混乱を長期化させることが利益になる。正統なジハード(聖戦)勢力とのイメージを強化し、タリバンの求心力低下も期待できるためだ。

今回のテロでは、自爆犯がタリバンによる検問をすり抜けて現場に接近していることから、タリバン兵にIS―Kの協力者がいる可能性も否定できない。

26日にオンラインで記者会見した米中央軍のマッケンジー司令官は、「タリバンを信用できるのか」との問いに、重要なのは「タリバンには、米国に(アフガンから)出ていってほしい理由があること」だと指摘し、「連携を継続する」と強調。米国は、無人機などを活用した上空からの監視態勢を強化する一方で、タリバンとの〝信頼なき協力〟に頼りつつ退避プロセスを進める構えだ。