【シリコンバレー時事】米企業が宇宙空間の活用に力を入れている。アマゾン・ドット・コムを創業したジェフ・ベゾス氏は有料の宇宙飛行を実現させた。世界の主要都市を短時間で結ぶサービスから地球外移住まで各社の構想は壮大で、将来のビジネスとして有望視されている。広く利用されるには、高額な費用を下げることが必要となる。

 電気自動車(EV)大手テスラ創業者のイーロン・マスク氏のスペースXは、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を送り届けるなど実績で先行。2023年には日本人実業家の前沢友作氏も参加する月周回旅行を予定している。

 スペースXはこの他、宇宙経由で地球上を1時間以内に移動できるサービスも計画。実現すれば東京から30分足らずでシンガポールに行ける。マスク氏は環境破壊などで地球に住めなくなるリスクを指摘し、「火星への移住が必要だ」と鼻息が荒い。

 一方、ヴァージン・ギャラクティックを立ち上げた英実業家リチャード・ブランソン氏と、ブルーオリジン創業者のベゾス氏は7月、それぞれ宇宙飛行に成功した。ブルーオリジンは、有料で客も乗せ商用化に踏み出した。ベゾス氏はこれまで「地球が最善の惑星だ」と語っており、19年の講演では宇宙に人工的につくられた居住空間(コロニー)にエネルギーなどの環境負荷の大きい産業を移す案も示している。

 事業として軌道に乗せるには、安全性の確保はもちろん、費用がカギとなりそうだ。ヴァージンは8月、1席当たりの料金を45万ドル(約5000万円)と発表。以前の25万ドルから引き上げた。ブルーオリジンの金額は非公表だが、ヴァージンと同程度とみられている。ベゾス氏は低廉化に向け「航空会社のようにしなければならない」と述べ、便数と客数を増やす必要があるとの認識を示している。