岸田文雄政権が4日発足した。第100代目の内閣総理大臣という節目の政権である。コロナに収束の気配が出はじめたとはいえ、第6次感染拡大の懸念が残っている。岸田首相はきのう開いた初閣議で「コロナ対策を最優先の課題」に位置づけた。ポストコロナを含め妥当な判断といえる。衆院選の投開票日を31日に設定するなど、ちょっとしたサプライズも表明した。予算委員会の開催を求めていた野党は反発しているが、政治空白を避けるためにも総選挙は早い方がいい。とりあえずは無難なスタートみていいのではないか。だが、この政権が本格的な政権になるかどうかは依然として不透明。閣僚に若手を起用したのは公約の実現として評価するが、アベノミクスをひっさげてロケットスタートを切った安倍内閣に比べると、出だしの勢いはあきらかに見劣りする。岸田政権は本格政権になれるか。
結果的に安倍政権は国民の期待を裏切ることになるのだが、ロケットスタートによって反対派や批判派、不満分子を押さえ込むことに成功した。政治というのは良くも悪くも、反対派や批判派、不満分子をいかに封じ込めるか、そこが一つの見どころである。いってみればサル山のサルを手なずける“ボス力”を争うゲームのようなものだ。安倍政権は官邸主導の政治権力を“チーム安倍”が支えた。その中心に菅官房長官がいた。岸田政権はその官房長官人事で揉めた。メディアの情報によれば萩生田氏を推す安倍氏と、これに反対する下村博文氏、森喜朗氏らが対立。結果的に同じ派閥の松野博一氏に落ち着いた。安倍氏はその人事の前に幹事長人事にも介入、高市氏を強力に推薦しただが、これは岸田氏が拒否したようだ。結果2連敗。安倍氏の中に屈折した不満が鬱積したと、一部のメディアや政治評論家がまことしやかに解説する。これは一例にすぎない。権力者は常に反対派や批判派、不満分子に取り囲まれている。
これを抑える方策は3つ。一つは強権政治、二つ目が斬新な政策、三つ目は国民的な人気である。中国や北朝鮮、ロシアと違って日本は国民主権の民主国家である。強権政治はとりづらい。岸田氏も斬新な政策と国民的な人気に頼る以外にない。就任早々の衆院解散は既定路線。支持率が高いうちに選挙の洗礼を受ける強運に恵まれた。人気もそれなりに維持できるだろう。問題は経済と安全保障だ。分配を重視した新しい資本主義を提唱するが、これを具体化するには相当の腕力がいる。安全保障はいまいちはっきりしない。独断で強権的に政策を実行するのも一つの手だが、本来穏健派で他人の意見を聞くことを得意とする岸田氏。権力の強権的行使はしないだろう。となれば魑魅魍魎、有象無象が跋扈する政界で生き抜く手段はチーム力しかない。岸田氏には当選4回以下の優秀な若手エリート(政治家)が複数側近としてついている。この人たちが“チーム岸田”の核だが、権謀術数の遊泳力は未知数。かくして岸田氏に求められるのは脱エリート、“政治的腕力”ということになる。
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