トランプ前大統領が自前のSNS(交流サイト)を創設すると、きのう発表した。同大統領は今年の1月6日に起きた米議会乱入事件をきっかけに、TwitterやFacebookから暴力事件を誘発する原因を作ったとして締め出されていた。トランプ氏のツイッターはフォロワーが何億人にものぼり、米政界に限らず世界中の政治情勢に大きな影響を与えていた。そこから締め出されたことにより同大統領は、情報を発信する有効な手段を失っていた。ライオンも吠えなければ檻の中にいる猛獣と一緒だ。米政界では来年11月の中間選挙を控え、民主党と共和党の駆け引きが水面下で活発になっている。共和党内で依然として隠然たる影響力を持っているトランプ氏、前から自前のSNSを立ち上げるとの噂があった。それが来年の中間選挙を前にいよいよ本格的になってきたというわけだ。

発表によるとトランプ氏はSNSを運営する会社を立ち上げた。新たなメディア企業の名前は「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループソー」。SNS創設の発表はこの会社がおこなっている。ブルームバーグ(BB)によると新たなSNSは、2022年1-3月(第1四半期)までに運営を始める予定だという。名称は「トゥルース・ソーシャル」。真実の社会とでも訳すのだろうか。TwitterやFacebookに対抗して真実を追い求めるというニュアンスがありありだ。さしずめ彼らはフェイク・メディアというところだろう。あらためてメディアの分断が進むのか、左右両派の交流サイトが競争して真の「トゥルース・ソーシャル」が実現するのか、興味深い対決になりそうだ。全てが予定通りに進めば、来年の中間選挙には十分間に合う。それだけではない。3年後に予定されている次期大統領選挙に向けた重要な武器になる。

これだけならいつものトランプワールド。批判派は大言壮語、大ボラと聞き流すことも可能だ。だがBBによるとこの会社、同社とは別会社の「デジタル・ワールド・アクイジション」との合併を通して上場も計画しているようだ。すでに上場に向けた動きは始まっている。多分、別会社が合併を目的とした特別買収目的会社(SPAC)を創設したのだろう。このSPACにフィデリティーのプラットフォームで顧客から大量の買い注文が入っているというのだ。19日に米株市場で取引が開始されたビットコイン先物上場投資信託(ETF)の6倍を上回る注文量になっているとある。ころんでもただでは起きないトランプ氏。影響力はここまで及んでいる。一方のバイデン氏。党内分裂の様相で巨大なインフラ予算はいまだに成立の目処が立たず、メキシコ国境に押し寄せている難民は政権発足以降200万人を超えていると報道されている。大丈夫かバイデン大統領、大丈夫か民主党。