【北京時事】来年2月に開幕する北京冬季五輪は、異例の3期目入りを懸けた来秋の共産党大会を控え指導者としての力量を問われる習近平国家主席にとって、必ず成功させなければならない重要イベントだ。中国政府は米欧でくすぶるボイコット論や新型コロナウイルスの抑え込みに全力を挙げている。

米議会、協賛企業を集中攻撃 北京五輪ボイコット促す

 習指導部発足の翌年の2013年、北京市と河北省張家口市は開催都市に立候補し、15年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で招致に成功した。08年の夏季五輪の舞台となった北京は、夏冬両五輪を史上初めて経験する都市となる。夏季五輪で責任者を務めたのが、国家副主席だった習氏だ。

 「民族精神を奮い立たせ、中華民族の偉大な復興実現のため国内外の男女が結集し団結・奮闘するのに資する」。習氏は16年の会議で、北京冬季五輪に国威発揚の目的があることを隠さなかった。中国の対外イメージ向上も狙いで、誘致時に指摘された北京の深刻な大気汚染は規制強化で改善しつつある。

 しかし米欧では、新疆ウイグル自治区の人権弾圧などを理由に要人の欠席やスポンサー企業の降板を求める声が上がる。今月18日のアテネの聖火採火式では、チベットの旗を掲げ五輪に反対する活動家が拘束された。北京夏季五輪でもチベット族の僧侶や住民の抗議行動を当局が鎮圧した「チベット騒乱」を受けて対中批判が高まり、ギリシャから中国に至る聖火リレーの沿道各地で妨害活動が起きた。

 「スポーツの政治問題化は五輪憲章違反」と主張する中国外務省は、国際的な根回しに抜かりがない。20日には各国大使らを招き、チベット自治区の紹介イベントを開いた。王毅国務委員兼外相はあいさつで「チベットの発展に対する攻撃・中傷は断じて受け入れない」とくぎを刺した。

 火種となる世界各地での聖火リレーは今回、新型コロナウイルスの影響で行われず、中国には好都合だった。ただ、国内の聖火リレーも会場周辺に限定され、期間も開幕直前の3日間のみ。騒動を回避できる半面、活気は失われた。

 聖火が北京に到着した20日、歓迎式であいさつした大会組織委員会の張建東・執行副主席は「大衆の健康と安全を第一に据える」と説明した。本番では国内観客を動員してコロナ対策の成果を演出する方向だが、北京をはじめ国内では再び感染拡大の兆しが見えており、緊張感が広がっている。