自民党最大派閥の細田派(清和政策研究会、93人)は11日の議員総会で、安倍晋三元首相の派閥復帰と新会長就任を満場一致で決めた。安倍氏は昨年9月の首相辞任から約1年2カ月ぶりに「表舞台」に復帰。さっそく対中国政策の強化や憲法改正などを訴え、「安倍カラー」を全開にした。

 派閥領袖(りょうしゅう)となった安倍氏が就任のあいさつでまず触れたのが、持論の大規模な財政出動と外交安全保障だった。

 「(コロナによる)国民の不安を払拭(ふっしょく)し、景気回復し、経済を力強く成長させていくために真水で30兆円を上回る予算が必要」「中国は近年急速な軍事費の増大を行い、台湾に対する軍事的な威圧を高めている」

 そして、悲願としてきた憲法改正については「憲法改正はまさに立党以来の党是だ。この議論の先頭に清和会が立とうではありませんか」と呼びかけた。

 派内では、首相辞任後も党内に影響力を保つ安倍氏への期待は高い。

 とりわけ、当選2~4期生は安倍総裁のもとで初当選しているため、安倍氏の対中強硬路線や早期改憲などを支持する議員が多い。中堅の一人は、「(岸田文雄)首相は対中政策だって憲法改正もどこまで本気かわからない。安倍派になって政権にそうしたことをやらせていく」と息巻く。

 安倍氏の派閥会長就任は、政権内の力学にも影響を与えそうだ。

 安倍・菅政権時代は官邸主導で政策が進む「官邸1強」と言われた。しかし、岸田政権では第2派閥の麻生派を率いる麻生太郎副総裁も財務相を辞し、党に戻った。ともに首相経験者であり、盟友の2人が最大派閥と第2派閥を仕切ることで、数の力でも、発言力でも官邸より存在感が増す可能性がある。

 安倍氏は記者団に「最大の政策グループですから当然岸田政権をしっかり支えていく。背骨でありたい」と語ったが、他派閥の中堅議員は、今後、派閥の力が強まることを警戒する。「国民から派閥のイメージは相当悪い。『安倍派の意向で決まった』というようなことになると、自民党全体の印象が悪くなる」(岡村夏樹)