立憲民主党の新代表に泉健太前政調会長が選出された。47歳。民主党、希望の党、旧国民民主党を経て昨年9月に立憲民主党に合流、政調会長を務めていた。共産党との閣外協力を推進した枝野前代表に比べれば、党内右派の穏健派といったところか。旧国民民主党に所属していた経歴から見ても、自民党との対立一辺倒に近い政治姿勢を貫いていた同党左派とは一線を画しているように見える。立憲民主党といえば言葉激しく政敵を攻撃するイメージが強い。これを変えることが新代表の責務だろう。そういう意味では共産党に寄りすぎた枝野時代の立民を、維新・国民民主連合にどれだけ近づけられるか、新代表がまず取り組むべき課題だろう。来年夏には参院選挙がある。まず共産党との閣外協力を破棄し、野党統一候補問題を白紙に戻す、これが最初の仕事だろう。

枝野時代の立憲民主党は、官僚に怒号に浴びせながら質問攻めにした「野党合同ヒアリング」に象徴される。上から目線で相手を罵るのは常套手段。説明責任を果たさない安倍・菅政権の権力的な政権運営の非を炙り出す以上に有権者に不快感を与えていた。「怒号あって政策なし」、これが立憲民主党の一般的なイメージである。裏を返せば“パラサイト自民党”でもある。政権獲得に向けた政策を磨くことなく政権を罵倒した。政策の代わりに推進したのが野党統一候補の擁立である。そのために共産党と閣外協力に踏み切った。有権者の共産党アレルギーに配慮して、「野党統一候補を目ざす市民連合」を間に挟むという小賢しい戦術も駆使した。結果は言うまでもない。小手先の対応で政権など取れるわけがない。政権奪取の最低条件、それは政権構想だ。

菅前首相の退任から始まった自民党の総裁選挙、衆議院解散に伴う総選挙、枝野代表辞任に伴う立憲民主党の代表選挙と、主要な政治イベントがすべて終了した。この間、安倍・菅長期政権に代わって岸田政権が誕生。総選挙では維新と国民民主党が勝利、統一候補を推進した立憲民主党は敗北した。総じて日本の政治情勢は右派と左派が勢いをなくし、中道勢力が伸長したように見える。岸田首相が率いる宏池会も歴史的に見れば自民党内の穏健・中道派だ。これは何を意味するのだろうか。右派と左派の対立は現状を何も変えられなかった。財政再建路線がなし崩し的に積極財政に転換したが、これはコロナの影響。増えたとはいえ中道勢力は相変わらず水と油だ。何かを変えるためには、ドイツの連立政権のような政権構想をともなった大同団結が必要になる。泉代表にそれを期待するのは無理か・・・。