[15日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は14─15日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ圧力に対応し、2022年中に計3回の0.25%ポイント利上げを行う見通しを示した。利上げを前に量的緩和縮小(テーパリング)を加速することを決め、来年3月に資産購入が終了すると見込んだ。
市場関係者の見方は以下の通り。
●米金利上昇は限定、ドル円の年初来高値更新は来年か
<野村証券 チーフ為替ストラテジスト 後藤祐二朗氏>
米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、テーパリングの加速はおおむね予想通りだったが、来年3回の利上げ示唆は予想よりも若干タカ派化したと捉えている。ただ、パウエル議長の議会証言以降、タカ派シフトの懸念は高まっていたので、サプライズに対するマーケットの備えは進んでいた。その結果、マーケットの拒否反応は非常に限定的となった印象で、株価は上昇し、米国の短期金利も上がりかけたが、結果的には(金利は)あまり動かなかった。FOMCを無難に消化してイベントリスクも終わったので、警戒感は和らいでクロス円は上昇したようだ。
ドル/円は114円台まで上昇したが、米金利の上昇が限定的だったことから、ドル/円がどんどん上値を追う雰囲気ではない。リスク選好的な姿勢が強まる中、安全通貨とされるドルと円は売られやすく、足元のドル/円は綱引きとなっている。
FRBのタカ派姿勢が明確になったので、ドル/円の方向感はドル高/円安で、目先のドル/円は113―115円程度で底堅く推移するとみている。ただ、年内に年初来高値を更新するのは難しく、ドルの115円トライはあってもおかしくはないが、年初来高値更新は来年に持ち越しとなりそうだ。
●いったんアク抜けの株高、持続力に不透明感
<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ほぼ想定通りの結果で、相場は株高で反応した。イベントを通過し「霧が晴れた」ということだろう。ただ、利上げ3回の示唆は若干タカ派寄りにみえる、足元の米株は上がり過ぎの可能性がある。日経平均は、一気に3万円に向かうほど持続力は強くないだろう。目先は、2万9000円台で値固めが進むかが焦点になりそうだ。
インフレ動向はまだ落ち着いていない。インフレが騰勢を強めるようなら、消費や企業収益への悪影響、金融政策のタカ派傾斜が連想されやすい。米株は高値警戒感がつきまとっており、実際に利上げが始まる年央ごろには、いったん5―10%程度の調整はあってもおかしくない。
来年は、堅調な企業業績を受けて、日経平均はいずれかのタイミングで3万円台に定着するとみている。今期業績の着地と来期の見通しが見えてくる春ごろではないか。ただ、北京五輪や新型コロナウイルスの感染動向などのリスク要因は残る。ボラティリティーの高い状況は続きそうだ。
●かなりタカ派、市場反応にはまだ要警戒
<りそなホールディングス チーフストラテジスト 梶田 伸介氏>
かなりタカ派な決定内容だったが、事前の市場では2022年末までに3回の利上げを予想する声もあったので、強いサプライズにはならなかった。米金利はやや上昇したが、大きく崩れたゾーンがなかったほか、株高方向に反応したことをみても、成功したFOMCだったとみることができる。
ただ、当日の市場反応はポジションの影響が大きい。タカ派な決定内容だったことは間違いなく、株式などリスク資産市場のあす以降の動きには引き続き警戒が必要だろう。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はバランスシートの縮小に着手するかどうかについてまだ決断していないとし、今後のFOMCで議論していくと述べた。いわゆるQT(資産縮小)について、市場とどうコミュニケーションをとっていくかも、今後のポイントになりそうだ。米連邦準備理事会(FRB)は14─15日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ圧力に対応し、2022年中に計3回の0.25%ポイント利上げを行う見通しを示した。
●緩和縮小加速で見通しほど利上げ必要なし
<マニュライフ・インベストメント・マネジメントのグローバルマクロストラテジスト、エリック・セオレット氏>
米連邦準備理事会(FRB)は金利上昇を想定しているが、量的緩和の縮小(テーパリング)ペースの加速はインフレの勢いを低減するため、3月末にバランスシートの拡大がゼロとなった時点で、金利見通しは大きく変わる可能性がある。
テーパリングが実際にインフレ抑制に十分であれば、FRBの見通しほど、利上げは必要とはならないだろう。
流動性引き揚げは実際には金利を押し下げるため、株式市場ではハイテク株や公益株などが恩恵を受けることになる。
●利上げへの体制整える
<オックスフォード・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏>
タカ派的だが、想定以上ではない。テーパリング(量的緩和の縮小)倍増はほぼ予想通りだった。インフレ率は「一過性」という文言が削除された。労働市場は実質的に進展している。
FRBはインフレ率に焦点を当て、今後数カ月間で利上げを進められるように体制を整えているようだ。
市場はもう少しタカ派的かもしれないが、見通しに関してはかなりバランスが取れているので、大規模な金融引き締めの引き金になるとは思わない。成長率見通しは来年はやや強めだが、中期的には弱含むため、イールドカーブ(利回り曲線)は今後一段とフラット化する可能性があるだろう。
●来夏の利上げに道
<フィッチのチーフエコノミスト、ブライアン・クルトン氏のリポート>
インフレ高進を示す明らかな証拠に促され、米連邦準備理事会(FRB)がより明確な方向性を示した。2022年3月の資産買い入れ終了を示唆することで、来夏の利上げに向けて道を開いた。ドットチャートを見ると、来年の利上げの必要性についてFOMCは全会一致で合意している。9月時点では半々だったのとは対照的だ。
また今回は、インフレに言及する文言が大きく変化した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に起因する需給の不均衡が、「一部セクターにおける価格上昇」ではなく「インフレ率」の上昇に寄与していると表現している。最も重要なのは、インフレがすでに「ある程度の期間」2%を超えていると指摘している点だ。FRBは、これまでのインフレ率低下分をもう十分に補ったと考えているようだ。
●米経済は利上げに耐えられる
<プリンシパル・グローバル・インベスターズ(ロンドン)チーフストラテジスト、シーマ・シャー氏>
消費者物価指数の上昇率が7%に迫る中、連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の縮小)の加速を決め、来年3回の利上げを想定したことは、特段驚くべきことではない。
市場では、米経済はこれほどのペースの利上げに耐えられるのかという疑問が出ている。これまでの1年8カ月の状況を振り返ると、2年間という期間に6回の利上げを実施するのは多すぎるようにも見える。
ただ過去の利上げサイクルを見ると、2004─06年にFRBは17回の利上げを実施した。われわれは米経済は利上げに耐えられると見ている。耐えられるだけでなく、インフレの観点から利上げは必要になっている。
●テーパリング終了後すぐに利上げも
<ナティクシス(ニューヨーク)の米州担当チーフエコノミスト、ジョセフ・ラボーニャ氏>
債券市場はこれまでのところ、米連邦準備理事会(FRB)が行ってきたことの大半を重視していない。
FRBがバランスシートのランオフ(自然減)を認めることはないようだ。むしろ、テーパリング(量的緩和の縮小)を加速させた理由は、3月に資産買い入れを終えた後、政策当局者が必要と見なせばすぐに利上げを開始できるからだ。
それがテーパリングを行う理由であり、それによって最大限の柔軟性を得ようとしている。パウエル議長の質疑応答に基づくと明らかにそうだ。