きのうは急激にタカ派に転向したパウエルFRB議長に驚いたが、きょうはイングランド銀行(中央銀行)が利上げに踏み切ったと言うニュースに仰天した。インフレが高止まりの様相を強めている中で、各国中央銀行が金融緩和から金融引き締めに動くのは世界的な流れだろう。引き締めのスピードも穏やか、FRBを例にとればテーパリング(資産買い入れの縮小)からはじまり、時間をかけて利上げに踏み切る。そんな気がしていた。ところが現実は予想以上にスピードが早い。FRBはテーパリングを加速し、従来予想に比べ3カ月も早い来年3月末までに完了するとの見通しを公表。そのあと0・25%単位で3回の利上げを年内に実施すると公表した。予想をはるかに上回る勢いでアクセルを踏み込んだ。だがそれも序の口だった。英中銀はきのう0.25%の利上げに踏み切った。

今週は中央銀行ウィークでもある。FRB、ECB、イングランド銀行、日銀など先進国の中央銀行が相次いで金融政策決定会合を開催する。すでに大半が終了している。日銀はきょう黒田総裁が記者会見を行なう。利上げを実施したのは英国にノルウェー、メキシコの3カ国。台湾、フィリピン、インドネシア、スイスなどはこれまでの金融政策を据え置いた。米国が引き締めを実施すれば、発展途上国の外貨がドルに吸い上げられる。英国やノルウェーは米国との金利差拡大による自国通貨安と、それに伴うインフレの加速を恐れて先手を打ったのではないか。オミクロン株の急激な感染拡大に伴う景気の低迷。それに通貨安が加われば物価上昇がさらにスピードアップする可能性がある。通貨当局としてはのんびり構えていられない。躊躇なく先手必勝に打って出た。そんな気がする。

ECBも事情は同じだが、構成国の事情は個々まちまち。トルコのように20%を超える物価の上昇に喘いでいる国が利下げするという不可解な国もある。エルドアン大統領の“狂気”のなせ技だが、これは例外。オミクロン株の感染拡大に伴う景気後退懸念に配慮しているのだろう。ラガルドECB総裁は依然として「インフレは一時的」と強調している。世界中の中央銀行が連帯して進めてきた金融緩和を伴ったゼロ金利政策が、インフレの急激な進行で転換を迫られている。連帯は姿を消し各国・地域の実情に配慮した個別の政策判断が優先されつつある。これもコロナの影響なのか、同調圧力をかわしながら独自の判断を貫こうとする国が増えているようにみえる。その結果がどうなるか、世界経済の近未来図を見通すのは簡単ではない。日銀はどんな判断を下すのか、黒田総裁の記者会見が見ものだ。