臨時国会の閉幕に伴う岸田総理大臣の記者会見をNHKニュースの生中継で見た。安倍、菅の前任者2人はどちらかと言うと滑舌が悪い総理大臣だった。安倍氏は滑舌というより説明下手といいうか、質問にまともに答えず話題を逸らす傾向があった。菅氏の場合は、聞いているだけで肩が凝るような気がした。資料に目を落とす回数が多く、言葉がすんなりと耳に入ってこない。それに比べ岸田総理の会見は、聞く耳を持っている人だけあって耳触りがよく、自然体で聞くことができた。しゃべっている内容よりも、久しぶりに普通の滑舌の人が総理大臣になった、そこが強く印象付けられた。だが、滑舌が時に少し乱れることもあった。気のせいかもしれないが、10万円給付で自治体が混乱したことや、日米首脳会談の日程がなかなか決まらないことに関する質問に答えた時に、やや乱れた。

以下はNHKからの引用。記者団の「18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、混乱を招いたのではないか」との質問に対し「大切なことは国民の利益になるようにするにはどうすべきか、常に制度の見直しを行っていく姿勢だ。スピード感を最優先にした機動的な対応を図っていきたい。これからも、こういった姿勢は大事にしながら政治を進めていく。これが結果として国民のためになると信じて努力を続けていきたい」と述べた。活字にすると滑舌の乱れは読み取れない。むしろ相手をはぐらかす安倍流答弁のようにも見える。質問のポイントを巧妙にずらしている。質問者は混乱の原因を聞きたかったのだろうが、答弁はそこをあえて外している。日米首脳会談は「アメリカは今、新規感染者の7割がオミクロン株だと報じられていて、変異株の状況は大変だ。できるだけ早く日米首脳会談は実現したい」と答弁。日程が決まらないのはアメリカの事情という説明だ。

首脳会談を対面形式で実施すると両首脳が合意したのは確かCOP26の首脳協議に参加した時のことだ。あれから既に2カ月近く経っている。1月17日には通常国会が始まる。「できるだけ早く」のタイミングは残り少ない。バイデン政権は岸田氏が親中国ではないかと疑っているという説もある。それを意識したのだろうか、滑舌が微妙に乱れた。政策通の岸田氏はコロナ対策や看護師の報酬引き上げ、成長戦略、北京五輪問題など朗々と滑舌良く答えている。それだけに微妙ながら乱れる滑舌がやけに気になる。案外この人は正直な人かもしれない。安倍元首相のように本音と発言が、180度乖離することはない。聞く耳を持つ正直な人が滑舌良く喋れば、聴衆は安心感を覚える。だが魑魅魍魎が蠢く政治の世界、腹に一物もない政治家はいない。「牛乳を飲もう」と国民に呼びかける岸田氏を評価しながら、ほんのわずかな滑舌の乱れが気になった。