【シドニー時事】オーストラリアで5月までに総選挙が行われる。与党勢力の保守連合を率いるモリソン首相は、インド太平洋地域で台頭する中国に対抗するため「親米色」を鮮明にしたが、与党勢の支持率は低迷。一方、約9年ぶりの政権奪還を目指す最大野党・労働党は「親中色」をのぞかせており、政権交代なら揺り戻しもありそうだ。

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 昨年12月の世論調査によれば、政党支持率は労働党が38%で保守連合の36%を上回った。新型コロナウイルスへの対応でワクチン接種が遅れ、昨年半ばにシドニーなどでロックダウン(都市封鎖)が導入されたことが、モリソン政権の人気の足を引っ張っている。

 豪国立大のイアン・マカリスター教授は、与党勢の支持率低迷について「経済に対する人々の懸念」が背景にあると分析した。新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大で、景気の先行き不透明感が増している。

 ただ、2019年の前回選挙では事前の調査結果に反し、保守連合が土壇場で逆転勝利した。選挙戦は終盤まで競り合いとなる可能性もある。

 外交では、最大の貿易相手国である中国が「経済的威圧」を強めて豪州産品に事実上の貿易制裁を科し、両国関係が悪化。モリソン政権は米国に接近し、昨年9月には原子力潜水艦を調達するため、米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設を発表した。今年2月の北京冬季五輪でも、「外交ボイコット」でいち早く米国と足並みをそろえた。

 一方、労働党の外交姿勢に関し、クイーンズランド大のマリアン・ハンソン准教授は「中国にはそれほど敵対的ではない」と指摘する。同党出身の歴代首相からは、親中的な発言も目立つ。キーティング元首相は、台湾有事の際に米国への軍事協力も辞さないとした現政権の閣僚の発言に対し「台湾は豪州にとって重要な利益ではない」とけん制している。