米労働省はきのう12月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)を発表した。12月の上昇率は前年同月比7.0%増、11月の6.8%を上回った。前月比では0.5%増(11月は0.8%増)でやや落ち着いた動きになっている。いずれにしても高い伸び率であることに変わりはない。この伸び率は1982年6月以来39年6カ月ぶりだという。これを受けてバイデン大統領は「物価の伸びは依然過度に高い」(ロイター)と危機感をあらわにし、「政府による一段の取り組みが必要」(同)とインフレ対策を強化する意向を示した。これに対してIMFのゲオルギエワ専務理事は、「インフレは今年の第二四半期に低下する」(同)との楽観的な見方を示している。CNBCテレビのインタビューに答えたものだが、この発言には大統領が見せた危機感は感じられない。

もう一つ楽観論を紹介する。ロイターによると、J Pモルガンファンズのストラテジストであるデビット・ケリー氏は以下のような見解を述べている。「エネルギー価格の低下に加え、食品や自動車価格の上昇の鈍化を受け、インフレは今年第一四半期にピークをつけ、上昇ペースはその後鈍化する」と見る。大統領は過去、専務理事とストラテジストは未来について発言しており、見解の対象は異なる。とはいえ、脅威を増しつつあるインフレの危機感に温度差があることは事実だ。11日に開かれた議長再指名に関する上院の公聴会でパウエルFRB議長は「インフレが予想以上に長く根付くようであれば、FRBは時間とともに利上げを実施することが必要となる」と、大統領と同じような危機感を表明している。ちなみにECBのラガルド総裁は「インフレは近くピークアウトする」と楽観論に近い見解を示している。

立場が違えば見解が分かれるのも致し方ない。問題はインフレの実態だ。1年前のいまごろマーケットでは米10年国債の利回りが上昇、この動きをめぐって市場がインフレの到来を予測した。これに対し政府・中央銀行は「インフレは一時的」として、先走るマーケットを牽制しながら金利の上昇を抑えてきた。結果はインフレ論で先行したマーケットの見解に中央銀行が追いつき、昨年12月にはインフレ対策としてテーパリング(資産買い入れの縮小)に踏み切った。これまでの実績を見る限り未来予測という点ではマーケットに分がある。この1年の経緯がそれを証明している。だが、インフレが3月までにピークアウトするかどうか、誰にも分からない。インフレ論で後塵を排した当局はいま長引く物価上昇を極度に警戒している。先行したマーケットはピークアウト論を言い出している。今度はどっちが正しいのだろうか・・・。