サマーズ元米財務長官はホワイトハウスが高インフレの原因について誤った認識を抱いていると指摘し、インフレを「企業の拝金主義」のせいにしようとすると、価格高騰を抑制するのにリセッション(景気後退)に陥らざるを得なくなるリスクを高めるだけだと述べた。

  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で、「拝金主義や特定のセクターを巡る問題に関して誤った見解を抱けば、最終的にリセッションが必要になるリスクを高める」と指摘。「景気が過熱しており、冷やす必要があることを認識しなくてはならない」と語った。

元財務長官のローレンス・H・サマーズ氏出典:ブルームバーグ

  ディース国家経済会議(NEC)委員長の今週の発言を引用すると、バイデン政権は「サプライチェーンの目詰まり解消や消費者保護、競争促進」に加え、税制・支出法案に盛り込まれた子育て費用の抑制に注力している。ディース委員長は「パンデミック下の不当利益」に懸念を表明しており、ホワイトハウスは大手食肉加工業者も標的にしている。

  サマーズ氏は、インフレの背景にあるサプライサイドの問題に注目するディース委員長は間違っていると指摘。「ワシントンの政策当局者が企業の拝金主義などが原因だと示唆する時は常に、インフレを抑制し雇用を安定させる上で必要な信頼を築く時期を遅らせている」と述べた。サマーズ氏は現在、ハーバード大学教授でブルームバーグの寄稿者でもある。

  サマーズ氏は港湾でのボトルネック解消の取り組みや半導体不足への対応、子育ての選択肢拡大は全て、物価上昇に対応する上で一助になるとしながらも、金融引き締めなどの措置で、過熱状態にある景気に対応することが鍵だと語った。

  さらに、ポール・ボルカー氏が1970年代に連邦準備制度理事会(FRB)議長に就任した後に起こったインフレ沈静に必要な「劇的な経済縮小に似た状況」を回避できる可能性はまだあるとの認識を示した。

  しかし、ここ数カ月に繰り返し警告してきたように、「基本的にインフレは高止まりに向かっている」と分析。インフレ期待の高まりや賃金上昇、労働力不足のほか、多くのさまざまな分野で価格上昇がまん延していることを理由に挙げた。

原題:Summers Says U.S. Risks Recession by Blaming Inflation on Greed(抜粋)