東京都のコロナ感染者数がきのう、ついに2万人を超えた。おそらくほぼすべてオミクロン株だろう。想像をはるかに超えた感染の拡大である。明日は北京五輪が開幕する。NHKによると宿泊施設に隔離されている選手団の中でも50人を超える感染者が確認されているという。スキージャンプの金メダル候補、オーストリアのマリタ・クラマー選手(20)は陽性が判明、五輪出場を取りやめた。こうした中で国内では、業務を遂行できなくなっている保健所が増えてきた。医療逼迫の前に保健所の業務破綻が心配される状況だ。こうしたことを想定していたのだろう。小池知事は1月13日の記者会見で、「5類への変更を含めて、化学的な知見を集めていただくようお願いしたい」(東京新聞)と懇願している。

懇願の相手は誰か。このあと「オミクロン株の特性を踏まえた対応方針を国に示していだだきたい」(同)と重ねて発言しているから、懇願の相手は国、つまり岸田首相ということだろう。通常国会ではいま与野党の論戦が真っ盛りだ。野党も5類への変更について首相の考え方を質しているが、いまのところ明確な方針は示されていない。感染者の急増で保健所は本来の役割を全うできなくなっている。時間的余裕はない。果たして首相はどう判断するのか。国の方針が明示されない中で、無症状で既往症のない若年層の診察回避や自己責任による経過観察など、自治体の中には法律に基づかない“ステルス5類化”を進める動きも出始めている。昨年10月の就任以来「最悪の事態」を想定しながらコロナ対策を進めてきた首相だが、保健所や医療機関は最悪の事態に直面しつつあるようだ。

コロナウイルスを2類から5類に指定替えすれば、感染者の隔離義務や入院勧告、経過観察など保健所や医療機関の義務的な業務が大幅に緩和される。半面、2類が規定している「危険度の高い感染症」という規定から外れるため、治療費やワクチン接種代など関連経費を国が負担する法的根拠もなくなってしまう。そうなると貧困層の金銭的負担が一気に増大することになりかねない。負担が大きすぎて診察もワクチン接種も進まないといった事態になれば、感染症対策の弱体化は避けられない。進むも地獄なら退くのも地獄だ。どちらに転んでも事態は最悪なのだ。こうした中でコロナ対策担当の山際大臣は東京都の感染者が2万人を超えたきのう、「増え方は緩やかになっている」(ロイター)との認識を示した。「広島・沖縄県は新規感染者数が減り始めており、方向としてはそのような方向にあるのは間違いない」(同)と強調している。わざわざ5類に指定替えをする必要はないということだろう。