東芝はきのう昨年11月に発表した会社3分割案を2分割案に修正すると発表した。今朝この記事を読んで唖然とした。もの言う株主が求めているのは東芝の企業価値を高めるためのガバナンス改革だ。一連の不祥事で大きく傷ついた名門・東芝の再生を図るキーワードは企業価値だ。再生案の肝もここにある。その答えを模索して東芝は昨年来様々な検討を続けている。だが検討の過程からは企業価値向上にかける経営陣の思いはまるで見えてこない。前社長の車谷暢昭氏は投資ファンドと組んで東芝の非上場化を目論んだ。だがステークホルダーの理解が得られず退任。後を継いだ綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)が現在の改革案を推進している。その集大成が「3分割案」だったが株主の賛成が得られず、「2分割案」に修正した。綱川氏は今回の修正について「迷走ではなく、最適解に向かうために必要なステップだ」(日経新聞)と強調する。そうなのだろうか。何かが欠けている気がして仕方ない。

日経新聞によると企業分割は「事業ごとの企業価値を顕在化するため」のもだという。そのために現経営陣は事業を中核事業と非中核事業にわけ、中核事業を2つに分割、その一方で非中核事業は売却する。その売却益を原資に今後2年間で「株主還元を従来の1000億円から3000億円に拡大する」というのだ。要するに東芝の企業価値を高める中核事業以外は切り捨て、そこで得られる利益を活用してうるさい株主のご機嫌を取ろうというわけだ。肝心の企業価値に関する新しい提案は何もない。これで東芝は本当に再生するのだろうか。それ以前にもの言う株主はこんな弥縫策で納得するのだろうか。綱川社長以下現経営陣が「これで株主の納得を得られる」と考えているとすれば、物言う株主を甘くみすぎているのでないか。問題の本質はどうやって企業価値を向上させるかだ。それに関する経営陣の熱い思いは今朝のメディアの報道からは何一つ伝わってこない。

東芝経営陣が模索しているのは会社の非上場化とか、3分割、2分割、果ては株主還元など企業経営にまつわる形式論ばかりだ。企業の価値にまともに踏み込んだ議論はまったく見えてこない。一連の不祥事のあと東芝本体の上場を維持するために成長部門だった東芝メモリー(現キオクシア)を売却せざるを得なかったことが尾を引いているのかもしれない。株主還元をどんなに増やしても企業価値は増えないだろう。株主から見ても一時的に還元が増えても、それが持続しない限りメリットはない。株主だけではない。すべてのステークホルダーは持続的な還元の拡大を求めている。それを実現するのが企業価値だ。企業価値を生み出すものそれは投資だ。投資にはリスクが伴う。だからガバナンス力が求められる。現経営陣にそれがあるようには見えない。経営陣を全員入れ替えて新しい再生案を作らせたほうが早いのではないか。今朝、東芝の記事を読みながらそんな気がした。