ウクライナをめぐる米ロの熾烈で過酷で下品な情報戦争が続いている。どちらかが虚偽の情報を拡散しているはずだが、どっちがフェイクか現時点では甲乙付け難い。そこできのう(17日)、メディアを通じて流れた双方の言い分を併記する。情報はいずれもロイター。どちらが正しかったか、いずれ分かるだろう。まずはロシアのペスコフ大統領府報道官。前日一部軍隊の撤収を発表したことに対して米国は「撤収は確認できない」とロシアの発表を否定した。これに対して報道官は「軍撤退には時間がかかることは明らかで、当然のことながら1日で撤収することはできない。時間がかかる」と弁明した。これに対して米国のオースティン国防長官はすかさず反応。「軍撤収の準備をしているとすれば、このような動きは起きないはず」とロシアの説明に反論した。このような動きはウクライナ東部ドンバスの国境付近で起きた軍事衝突を指す。
この軍事衝突についても両国は相手側が先に仕掛けたと真逆の主張をしている。オースティン氏は「ロシアが軍事紛争を正当化するためにこうした行動をとる可能性がある」と牽制する。さらにバイデン大統領が追い打ちをかける。「ロシアがウクライナに越境する用意が整っているあらゆる兆候を確認している」、さらに「侵攻を正当化する口実とする『偽旗作戦』を展開していると確信する十分な証拠がある」と。まるで証拠を見てきたかのように自信たっぷりに記者団に語る。その上で「個人的な感触だが」と断って「侵攻は数日以内に起こるだろう」との見通しまで述べている。数日経っても侵攻が起こらなかった時にどう言い訳するのだろう。余計なことと思いつつ数日先に判明する結果が心配になる。こうした中でロシアはこの日、米国が文書で示した回答に対する反論を文書で米国に提出した。これは正式な外交手続きを経た文書だ。
ロイターによるとポイントは、①ロシアの要求に対して米国は建設的に対応していないとの不満の表明②NATOが1月に拒否した安全保障に関する要求を改めて表明③ミサイル施設の相互査察についての協議を提案―の3点。こうした文書を受け取った上でブリンケン米国務長官は安全保障理事会で演説した。「ロシアがウクライナ侵攻の口実を捏造することを計画している」、「(口実には)化学兵器を使用した偽もしくは実際の攻撃が含まれている」、こうした攻撃は「ジェノサイド(大量虐殺)やエスニッククレンジング(民族浄化)と表現する可能性がある」と、極めて強い表現を使って警告を鳴らした。罵りあいもここまでくると恐ろしくなってくる。「侵攻の計画はない」と強調するロシア。民族浄化まで持ち出す米国。ウクライナの国境を挟んで緊迫の度を強める危機、どっちがフェイクかいずれ歴史が証明するだろう。
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