ウクライナの首都キエフから列車で最速約8時間。西部リビウには「10万人」(国連)とも言われる国内避難民の多くが向かう。ポーランド、オーストリアの支配が長かったリビウは反ロシア的傾向が強く、民族派の中心地と言われる。市内では軍のための献血に行列ができるなど、対ロシア戦の後方支援の拠点にもなっている。

ウクライナ、国外退避加速 女性や子供多数、家族離散

 「2人用個室に4~6人詰め掛けたり、床に座って寝たり」。キエフから鉄道で「脱出」してきた匿名の市民は、ロシア語の独立系インターネットメディア「メドゥーザ」の取材にこう語った。運賃は無料といい、現地のプラットホームに人がごった返す様子も伝えられている。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)報道官が24日に発表したところでは、10万人以上が家を失ったか国内避難を強いられ、近隣国に逃れた人も数千人いる。リビウは陸路でポーランドに出国できることから、日本などが大使館機能の一部を移している。

 俳優出身で雄弁なウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)が「私がナンバーワンの標的だ」と話す通り、ロシア軍の第一の標的はキエフだ。ただ、キエフから500キロ以上離れているリビウも全く安全ではない。ロシアのプーチン大統領が「特殊軍事作戦」の開始を発表した24日には、リビウも攻撃対象となった。リビウからは過去8年間、ウクライナ民族派が「志願兵」として東部の紛争地に向かっており、攻撃には反ロシア派をけん制する意味合いがあったとみられる。

 「夜10時から朝6時までは外出禁止」。リビウのアンドリー・サドビー市長(53)は連日、フェイスブックなどで市民に警戒を促す。夜間に活動している恐れのある「ロシア工作員」と市民を区別するのが理由だという。市当局は、爆撃の「目印」が屋根に描かれているのを発見次第、直ちに消すよう呼び掛けている。