プーチンの号令一下、ロシアがウクライに侵攻してからずっと気になっていることがある。中国はどう動くか、だ。北京オリンピックの開会式にプーチンが出席。習近平主席と首脳会談を行った。西側首脳が外交的ボイコットを宣言する中で両首脳はニコニコ顔で写真に収まり、中ロの蜜月を世界中にアッピールした。会談後に共同宣言が発表され、両国は「北大西洋条約機構(NATO)拡大に反対すると明記」した。経済協力の一環としてロシアが中国へ莫大なエネルギー提供を行うという約束も盛り込まれた。まるで今日の事態を想定していたかのような首脳会談である。中国が五輪閉幕後にウクライナ侵攻が始まるという事実を、この時点で知らされていたかどうかは分からない。だが、首脳会談の時点でウクライの国境付近が一触即発の状態だったことは間違いない事実だ。
ウクライナ侵攻が始まり、世界的に半プーチンの世論が高まるにつれ、中国の歯切れが悪くなっていったような気がする。国連安保理の非難決議は反対に回らず棄権した。この辺りから中国の政権中枢に、ロシアならびにプーチンに対する迷いが生じはじめたようにみえる。中国も国際的な世論の動向を無視できない。台湾という固有の領土問題も抱えている。領土と主権の侵害は相手が誰であっても認めることはできない。ブルーンバーグによると中国の王外相はきのう、ウクライナのクレバ外相と電話会談を行った。中国外務省によるとこの会談で同外相は「ウクライナとロシアの間で起きた紛争を非難する」と表明した。ロシアからすれば「中国はNATOに加担するウクライナを非難すべきだ」と言いたくなるだろう。だがここで中国は「紛争を非難する」と極めて曖昧な表現を使っている。
声明は「中国は常に万国の主権と領土保全を尊重する立場だ」と、従来からの原則論を強調している。この原則論を堅持すれば当然のことながら中国はロシアを非難しなければならないはずだ。だが、プーチンに並ぶ独裁者である習近平主席の顔も立てなければならない。だからウクライナとロシアに「交渉を通じた問題解決」を呼び掛けると逃げを打った。中国はロシアに負けず劣らずウクライナとは親密な関係にある。首都キエフは一帯一路の戦略上極めて重要な都市でもある。ウクライナの最大の貿易取引相手は中国だ。第1号の空母となった「遼寧」は、ウクライナから譲渡されたものでもある。米国という共通の敵がなければロシアと中国はウクライナをめぐって対立してもおかしくない関係にある。そんな中国が今動くに動けない。表面的には親ロシアを演じているが、本音は反ロシアかもしれない。ロシアとて事情な同じだろう。中国の悩みは深い気がする。
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