北大西洋条約機構(NATO)の軍司令官らは、ウクライナ国境での誤解で戦争に突入することがないようロシア側と連絡を続けている。

  過去24時間では、戦災から逃れてきた人の集合地点となっているウクライナ西部のリビウ周辺部にロシアのミサイルが着弾した。先週末にはポーランド国境から近い軍施設をロシアは攻撃した。

  西側の当局者は、いっそう深刻な事態の発生を懸念している。例えば、NATO加盟国の領内にロシアがミサイル攻撃し、事態がエスカレートしてロシアとの戦争に引きずり込まれる可能性だ。

  核兵器保有で世界二大陣営の衝突は、冷戦初期にソ連が最初の原爆を手にして以来、軍の作戦担当者が回避に腐心してきた悪夢のシナリオだ。ロシアのウクライナ侵攻を受け、両陣営の指導者らは数十年ぶりにこうした見通しを考えざるを得なくなった。

  ロシアのプーチン大統領は2月末、核抑止部隊に特別警戒態勢への移行を命じ、NATOにウクライナで介入しないよう警告した。ブリンケン米国務長官は繰り返し、NATO領内にロシアの攻撃があれば米国は防衛する用意があると主張している。

  ただ、複数の西側当局者は、誰かが犯した誤りのために戦争に入りたくはないと話す。

NATOのストルテンベルグ事務総長Photographer: Valeria Mongelli/Bloomberg

  NATOのストルテンベルグ事務総長は今週、国防相理事会を前に記者団に対し、「ドローンや航空機など空の軍事活動活発化でリスクが生じている」と指摘。「偶発的な事故や事案が生じないようあらゆる手を尽くし、起きてしまった場合にも抑制できなくなる事態に陥ることがないようにしなければならない」と語った。

  複数のNATO当局者によると、ロシア軍はウクライナの都市への爆撃と態勢の立て直しを続けているものの、NATO軍への挑発や交戦する構えを今のところ見せてはいない。

  だが、ロシアのリャプコフ外務次官は12日に国営テレビで、米国とNATO加盟国によるウクライナへの兵器供給は攻撃対象になると言明し、「危険な動き」だとけん制した。

原題:NATO Wants to Avoid Stumbling Into a War With Russia by Mistake(抜粋)