きょうは、ちょっとマニアックなテーマに関する雑駁な考察。ブルーバーグ(BB)によると、米国の債券市場できのう、2年物国債の流通利回りが10年物国債を上回る逆転現象が発生した。いわゆる長短金利の逆転というやつで、2年債と10年債の逆転は2019年8月以来だという。この時は米中が貿易戦争を繰り広げていた。今回はロシアがウクライナに軍事侵攻、リアルな戦争の真っ只中である。2年と10年の組み合わせに限らず、あらゆる長短の組み合わせで逆転現象が起こっているようだ。この現象は「将来の景気後退の前兆である可能性が高い」(BB)と言われている。ただし、景気後退がいつ起こるか、はっきりとは分からない。これまでの経験によると「2年以内に起こる」ということのようである。すでに景気の回復感がないまま(米国を除く)、世界中で物価が上昇し始めている。スタグフレーション再来か、長短金利の逆転を待つまでもなく、景気の先行きは危うい。

日本でも物価上昇の気配が濃厚になっている。ガソリン価格の急騰で農産物が値上がりし、円安に伴う輸入物価の上昇で4月から食料品が相次いで値上げされる。もちろん金利にも欧米諸国並みに上昇圧力がかかっている。そんな中で日銀はきのう、新発10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる「連続指し値オペ」を実施した。31日まで連続でこのオペを実施するという。市場オペは日銀の独占的な権限であり、日本経済の安定的な運用にとって不可欠の手段である。だからといって、全てのオペを無批判に受け入れていいのだろうか。今回のオペは、日本経済の防衛というより、現在実施している異次元緩和を守り抜く日銀の決意表明みたいなものである。異次元漢和は長短金利操作(YCC=イールド・カーブ・コントロール)付量的質的金融緩和が柱になっている。この政策における長期金利の上限は0.25%、外部環境の変化によってこの上限が破られそうになっている。

諸行無常、あらゆることは常ならずだ。コロナに伴うサプライチェーンの毀損、トンネルの先に光が見えた途端、半導体の需要が急回復し価格が高騰。つれて各種の物価が連鎖的に上昇気配を強めた。そこにロシアによるウクライナへの侵略戦争である。モノもカネもミスマッチが起こりはじめている。放っておけばスタグフレーションという悪夢の再来になりかねない。FRBもECBも英国も東南アジア諸国も、各国中央銀行はちょっと先に蠢きはじめた暗雲を取り除こうと、大胆な政策調整に動きはじめている。そんな中でひとりわが日銀だけは、景気にさして効果のなかった異次元緩和を守り抜こうとしている。「必要ならいつでも追加緩和に踏み切る」と主張する頑なな黒田日銀総裁を見るたびに、独りよがりな理論を振り回し、救世主のごとく振る舞うファシスト・プーチンの傲岸で不遜な姿に重なってしまう。国際世論から完全に孤立しつつある日銀、果たしてこのままで日本経済を救えるか・・・