けさの読売新聞オンラインに、ゼレンスキー大統領が名指しし、ネット上で不買運動の呼びかけが広がるケースもある、と指摘された企業のリストが掲載されている。参考までにこのリストを掲載する。個人的にはここに掲載されている企業の不買運動に参加するつもりはないが、民主主義陣営に籍を置く企業にとってはこの表に乗ること自体が大きなリスクだろう。ロシアによるウクライナ侵攻という事態に直面し、当該企業はこれからどういう対応をとるのか、要注目だ。記事によると「撤退計画はない」としていたオーストリアの銀行ライファイゼンは、一転して「撤退検討」を米メディアに明らかにしたとある。ESGが企業の命運を左右する時代である。ロシアは無差別殺戮に手を染めているプーチン施政下にある。独裁者が牛耳るロシアで営利事業を展開するリスクは計り知れないほど大きい。

記事の冒頭には次の一文がある。「ウクライナの子どもたちが死に、街が破壊されても、ロシアでのビジネスが成り立っている」。この記事を書いた記者の思いがそのまま挿入されたのだろう。本当は「即刻プーチンに抗議して事業を停止すべきだ」と書きたかったのではないか。気持ちはよくわかる。経営者だってそうしたいのかもしれない。だが、社員がいて家族がいる。株主もいれば消費者もいる。取引先の企業もあり、そこにも家族や株主、取引先も消費者もいる。連綿と連なるエコシステムの構造は、経営者の一存、例えば「道徳的な怒り」だけでは何一つ決定できない構造になっている。「戦争を止めるためには、暴力以外のあらゆることを実施すべきだ」、専門家の言葉を引用しながら記者は、ロシアに進出している企業に対して暗に撤退せよと呼びかける。

社会の木鐸としては、これが最低限の示唆かもしれない。この記者は企業の苦悩も理解している。「多国籍企業は、ロシア市場を失うリスクと、事業継続でこうむる悪評との間で厳しい判断を迫られている」と締めくくる。いかにもありふれた結論だ。こうした結語しか導き出せないところに、民主主義陣営が陥っている閉塞感があるような気がして仕方がない。バイデン大統領は「プーチンは権力の座に留まるべきではない」と断罪した。この発言が波紋を広げた途端に「(あれは)道徳的な怒り」の表現にすぎないと軌道修正した。英国のジョンソン首相は「ロシアの政権交替は目指さない」と議会で表明している。仮に停戦が実現したとして、その後、西側の首脳はプーチンとどうやって付き合っていくのだろうか。経済制裁はいつ解除するのだろう?西側陣営はフォシストと共存共栄するしか手がないのだろうか・・・。

<読売新聞オンライン>より引用