[ワシントン 1日 ロイター] – 米労働省が1日発表した3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月より43万1000人増加し、堅調な伸びを示した。また失業率は3.6%と2020年2月以来、約2年ぶりの水準に改善した。2月の失業率は3.8%だった。

3月は専門職・企業サービス、金融、小売の各部門の雇用者が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前を上回る水準に回復。高インフレや金融政策引き締め、ロシアのウクライナ侵攻といった向かい風に直面しつつも、米経済が堅調な勢いを維持している様子がうかがえる。

全体の就業者数もパンデミック前から約160万人減の水準まで回復した。

賃金上昇も再び加速しており、米連邦準備理事会(FRB)が5月に政策金利を0.5%ポイントと大幅に利上げする下地となった。FHNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロー氏は「FRBは失業率の動向に注目している」と述べた。

BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サール・グアティエリ氏は「インフレやロシア・ウクライナ戦争を巡る懸念にもかかわらず、米企業は全速力で採用を続けており、より多くの人々が労働市場に戻ってきている」と指摘。「こうした状況は経済にとって好材料だが、労働市場はタイト化し、賃金が上昇傾向にある中、インフレの炎をあおる」とし、FRBが5月の会合で「大きく動く」かどうか決断を迫られるという見方を示した。

バイデン大統領は、働く人が増えればサプライチェーン(供給網)の圧力が緩和されるとして、雇用統計の内容を歓迎。「インフレの抑制という面で良いニュースだ。経済にとって都合が良く、景気が立ち直りから活発に動き出していることを意味する」と述べた。

2月の雇用者数の増加幅は、当初発表の67万8000人から75万人へ上方改定された。3月の市場予想は49万人増。ただ、20万人増から70万人増まで幅があった。

業種別では、レジャー・接客が11万2000人増と、全体の雇用者の伸びを主導した。専門職・企業サービスは10万2000人増、小売りは4万9000人増、金融関連は1万6000人増で、就業者数はいずれもパンデミック前の水準を超えた。

製造も3万8000人増加したものの、パンデミック前の水準には戻していない。建設は1万9000人増加し、コロナ禍前の水準に回復した。

家計調査に基づくと、3月には新たに41万8000人が労働人口に加わった。

労働参加率は62.4%と、2月の62.3%から上昇した。

3月29日発表の政府統計によると、2月末時点の求人数は1130万人と過去最高に近かった。求人数と求職者数との需給ギャップは労働人口の3.0%で、第2次世界大戦後最高だった昨年12月の3.2%に近い。

労働者が引き続き不足している中で、今年3月の時間当たり平均賃金は前月比0.4%上がった。2月は0.1%上昇していた。3月は前年同月比で5.6%上昇。2月は5.2%伸びていた。

雇用者数の伸びは第1・四半期に月間平均56万2000となった。

3月の雇用統計と今月12日発表予定の消費者物価指数(CPI)統計は、5月3─4日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)会合での金利決定に極めて重要な意味を持つ。

FRBは3月、政策金利を0.25%ポイント引き上げ、3年超ぶりの利上げを開始。政策当局者はタカ派的な発言を強めており、パウエルFRB議長は高インフレの定着を防ぐために利上げを「迅速に」、場合によっては「より積極的に」行う必要があると述べている。

新型コロナウイルスの新規感染者数が激減し、全米で規制解除が進んできたことが雇用需要を後押ししている。ロシアとウクライナの戦争が響いてガソリン価格は1ガロン当たり4ドル超となったが、戦争が労働市場に影響を与えた兆候はまだ出ていない。

ブラックロックのリック・リーダー・グローバル債券部門最高投資責任者(CIO)は、雇用統計がFRBの利上げを正当化する内容になったとしつつも、「主に供給ショックに起因するインフレを背景に経済には足元明らかなへこみが存在するため、FRBは難しい舵取りを迫られることになるだろう」と述べた。