【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は1日の中国との首脳会談で、ウクライナに侵攻したロシアを制裁逃れや軍装備品供与で支援しないよう求めたが、両者の主張はかみ合わなかった。人権問題などをめぐり近年急速に関係が冷え込んだ双方の溝は一段と深まり、EUの対中政策は岐路に立たされている。

 フォンデアライエン欧州委員長は会談後の記者会見で、「非常に明確に対立した」見解を抱いていたと厳しい認識を示した。

 習近平国家主席は和平促進を唱えたが、ロシアを含む関係各国の「合理的な安全保障上の懸念」に配慮するよう求めて侵攻を非難せず、「庶民に重い代価を払わせてはならない」と米欧のロシア制裁に改めて反対した。

 フォンデアライエン氏は「少なくとも制裁を邪魔すべきではない」とロシアと距離を置くよう訴えたが、確約は得られなかったもようだ。ミシェルEU大統領は「理解されたと望む」と述べるにとどめた。

 EUは、中国との対決姿勢を前面に押し出す米国とは異なり、「協力相手であり、ライバルでもある」と中国を位置付け、分野によっては関係深化を図る独自戦略を模索してきた。

 しかし、中国の人権問題や貿易をめぐる対立から、EUの対中不信は増幅。中ロが2月上旬の共同宣言で、北大西洋条約機構(NATO)拡大に反対し、協力に「制限はない」と表明したことで、力による国際秩序の転換を目指し中ロが連携する事態への警戒感が一気に高まった。

 フォンデアライエン氏は、中ロの連携は国際秩序にとって「決定的な瞬間」になると重大に受け止めている。EUは中国に対し、ロシアを支援すれば、最大の貿易相手であるEU内での信用を失い、企業の中国離れを招くと警告。米国と歩調を合わせて中国をけん制した。

 ただ、中国はEUにとっても最大の貿易相手国で、EUが厳しい対応を取る場合、対中戦略の大幅な修正が不可避となる。習氏は「EU側が自らの対中認識を持ち、自主的な対中政策を行うよう望む」と語り、米国と異なる道を選ぶようクギを刺した。