【ベルリン時事】ドイツのメルケル前首相の軍事顧問を務めたエリッヒ・ファート氏は2日までに、オンラインで時事通信のインタビューに応じた。ロシア軍のウクライナ侵攻で、ドイツが「過度な平和主義の幻想から覚めた」と指摘。国防費が計画通り増額されれば世界3位となり、米国の戦術核兵器を自国に配備する「核共有」政策も堅持し続けるとの認識を示した。主なやりとりは次の通り。

ウクライナに間接供与の用意 旧ソ連製戦闘機、独移送へ―ポーランド

 ―独連邦軍は常に資金不足に悩まされてきた。

 冷戦終結後、ドイツ最終規定条約で兵力の上限が設定され、その後に徴兵制も廃止された。さらに過去20年間は、米軍などとのアフガニスタンでの作戦に資源が集中した。今回の事態で自国防衛の必要性に直面したが、備えは全くなかった。

 計画通り国防費が国内総生産(GDP)比2%に増えれば、米中に次ぐ世界3位となる。ただ、支出拡大だけでなく、平和への積極的行動や非常時に武器を取って戦う覚悟も必要だ。ドイツにはその準備がない。もちろん、力だけでなく外交も重要だ。

 ―ドイツも日本同様、平和主義が強い?

 両国とも第2次大戦で完全な敗北を喫した。ドイツで戦争はネガティブにしか語れず、現在も戦争を外交・安全保障の一部と捉える英米と全く異なる。残念ながら、暴力は過去も未来も外交の一手段だ。多くのドイツ人は目をつぶり、「世界は良い方向に向かっている」と考えてきたが、今は幻想から目が覚めた。

 ―核共有政策への影響は。

 反対は強かったが、変わった。(政権与党で平和主義を掲げる)緑の党も支持している。航空機での核投下は第2次大戦の手法で、現代は別のやり方があると思うが、支持する姿勢が重要だ。

 ―北大西洋条約機構(NATO)の直接参戦拒否は正しいか。

 正しい。ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定し、ロシア機撃墜の準備をすれば、第3次大戦につながる。現在、米欧は大量の武器を送っており、政治解決まで時間を稼げる可能性はある。

 ―メルケル政権なら対応は変わった?

 軍備増強などは2014年のクリミア併合後に着手できたはずで、アフガン撤退もより早くすべきだったかもしれない。時間は失われた。しかし、それは現在の視点から過去を批判することだ。