[ワシントン 19日 ロイター] – 国際通貨基金(IMF)は19日公表した世界経済見通しで、2022年の世界経済の成長率予測を1月時点の予測から0.8%ポイント下方修正し、3.6%とした。ロシアのウクライナ侵攻が背景。

インフレは多くの国にとって「今そこにある危機」とし、侵攻を受けて進行する見通しを示した。また予測には「異例に高い不透明感」があるとしている。

ロシア産エネルギーに対する追加制裁、戦争の拡大、予想を上回る中国経済の減速、新型コロナウイルスの再流行で、さらに景気が減速し、インフレが進行する可能性があるとも指摘。物価上昇には社会不安を引き起こすリスクがあるとの見方を示した。

経済成長率予測の下方修正は今年2度目。23年の世界経済の成長率予測は0.2%ポイント下方修正し、3.6%とした。

世界経済の成長率は中期的には約3.3%に減速する見通し。04─13年は平均4.1%、21年は6.1%だった。

IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は19日公表したブログで「世界経済の見通しは大幅に後退した。ロシアのウクライナ侵攻が主因だ」と指摘。

ロシアとウクライナは大幅なマイナス成長となる見通し。ロシア産エネルギーへの依存度が高い欧州連合(EU)の22年の経済成長率予測は1.1%ポイント下方修正された。

同氏は「世界経済を近年圧迫していた一連の供給面のショックが、戦争により増大している。その影響は、コモディティー市場、貿易、金融面のつながりを通じて、地震波のように広範囲に伝わるだろう」と述べた。

エネルギー・食品価格の高騰で恩恵を受けるコモディティー輸出国以外、全てのグループの中期見通しが引き下げられた。

先進国が新型コロナ前の生産トレンドを回復するにはより時間がかかる見通しで、先進国と途上国の格差は続く可能性が高い。新型コロナ流行で「消えない傷跡」が残るとしている。

<インフレ率予測を上方修正>

IMFは、高インフレが長期間続くと予測。戦争に起因するコモディティー価格の上昇と広範な物価圧力が背景で、需給の不均衡が拡大すれば、状況が一段と悪化する恐れがあるとしている。

22年のインフレ率予測は、先進国が5.7%、新興国・途上国が8.7%。1月の予測からそれぞれ1.8%ポイント、2.8%ポイント上方修正した。

同氏は、米連邦準備理事会(FRB)など多くの中央銀行がすでに金融引き締めに動いているが、戦争に関連する混乱でそうした圧力が増幅されていると指摘。

IMFは、インフレ期待のアンカーが外れ、さらに積極的な引き締め対応が促されるリスクが高まっていると指摘。広範な新興国に圧力がかかる可能性があるとの見方を示した。

新興国・途上国の金融状況は、ウクライナ侵攻直後に引き締まっており、プライスの再設定は「おおむね秩序だった」ものだが、さらなる引き締まりと資本流出の可能性があるとしている。

戦争により、世界経済が長期的に地政学的なブロックに分断され、技術規格、クロスボーダー決済制度、準備通貨が異なる状態になるリスクが高まっているとも指摘した。

同氏は「こうした『構造的転換』が長期的な効率性低下とボラティリティーの増大につながり、過去75年間、国際関係・経済関係をつかさどってきたルールに基づく枠組みにとって重大な課題になる」と述べた。