孫正義氏が率いるソフトバンクグループ(SBG)がきのう、22年3月期決算を発表した。日経新聞(Web版)によると「2022年3月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が1兆7080億円の赤字だった。前の期は国内最大の純利益である4兆9879億円を記録したが、一転して過去最大の赤字に転落した。世界的に成長株が下落したあおりを受け、未公開企業に投資するビジョン・ファンドの運用成績が急激に悪化した」ことが要因。確認のため同社ホームページで決算短信を開いてみた。売上高は6兆2215億円、税引前利益8695億円の赤字、当期利益1兆4622億円の赤字、親会社の所有者に帰属する当期利益は1兆7080億円の赤字。SBGは株式の売買で利益を稼ぐ会社。コロナやロシアのウクライナ侵攻でインフレが加速、世界中のマーケットが急落した影響をモロに受けた。

この決算を受け専門家や投資家の間で同社の将来をめぐる論争が起きている。「超積極的な投資が裏目に出た」、「守りを固めればまたチャンスが巡ってくる」など、見方は分かれている。個人的には同社の将来を占う知見は何一つ持っていないが、孫氏はソフトバンクを起業して今年で41年目になる。この間、倒産の危機に何回も見舞われている。その都度異常なエネルギーというか執着心でその危機を乗り越えてきた。その意味で孫氏の最大の長所は危機に強いことだろう。普通の経営者なら打ちのめされて立ち上がれなくなるような失敗も、この人は逆にそれを復活のバネにしているようなところがある。きのうの決算発表では「守りを固める」と強調していた。攻撃から一転して守りに変身する。変わり身の早いところもこの人の特徴かも。潮流を作り出している人ではない。潮流を先取りしてきた人だ。潮流が変われば経営方針も変わるということだろう。

その昔、孫氏の記者会見を取材したことがある。ソフトバンクが当時の店頭市場に株式を公開し、巨大企業にのし上がるスタートを切った頃のことだ。付き人がいたのかもしれないが、一人で記者会見を取り仕切っていた。歯切れが良く、全てに明快だった。経営の見通しも理路整然としていた。人生60年、自分の人生と会社の成長をオーバーラップさせながら成長物語を語っていた。それは大富豪を目指す少年の夢物語のようなものだった。夢はあらかた実現したが、60歳で社長を辞める予定は撤回した。AIの魅力に取り憑かれ、先端技術とニュービジネスに投資する道を選択したのだ。投資会社としてまたたく間に急成長した。サウジアラビアと組んだビジョン・ファンドは一世を風靡した。その会社が1年前に純利益で4兆9879億円を稼ぎ出した。1年後、今度は1兆7080億円の赤字に転落した。すべてが波瀾万丈なのである。さて、この先どうなるか・・・。