昨日来、日本中で盛り上がっているのはこの話題ではないか。新聞、テレビ、週刊誌などメディアはどこもかしこもこの問題を取り上げている。とりわけ熱心なのが週刊誌とテレビの情報番組。ネットの時代だから週刊誌も発行日を待つ必要がない。ネットでかなりのスペースを割いて報道している。ニュースマニアとしてはついついみてしまう。派手な見出しで読者の興味をそそるメディアの“陰謀”に、何の抵抗もなくはまってしまう。それもこれも、ある日突然、4630万円が自分の口座に振り込まれたらどうするか、ネコババへの誘惑が心のどこかに潜んでいるのかもしれない。読売新聞は「4630万円誤送金された男性『海外のネットカジノで使った』…弁護士が明らかに」と見出しをつけた。某週刊誌は「『ネットカジノで全部使った』4630万円問題 24歳男性の説明に疑問も、税理士の見解は」と“疑問”を強調している。

まずは事件の概要。読売新聞によると「山口県阿武町が新型コロナウイルス対策関連の給付金として、4630万円を誤って町内の男性(24)の銀行口座に振り込み、返還されていない問題で、男性の代理人弁護士は17日、男性が『(入金された給付金を)海外の数社のネットカジノで使った』と話していると明らかにした」。ポイントは本人ではなく弁護士が返金できない理由として「海外のネットカジノ」で使ってしまい、手元に現金がないと説明している点だ。カジノはまだ国内にはない。使うとすれば海外しかなく、説明は一応筋が通っている。だが、数社のネットを使ったにしろ、4630万円すべてを使ったという説明は腑に落ちない。まして24歳の当該男性は賭博の常習犯ではなさそそうだ。誤入金された給付金を隠すための口実にしてはあまりにも唐突な気がする。本人が考えたのか誰かの入れ知恵か、想像は悪い方に自然に傾いていく。

仮に海外カジノで全部すったという説明が本当だとしても、これだけ話題になれば税務署が動くだろう。4630万円という雑収入には税金がかかる。損失は経費にならない。丸々課税される。阿武町は騙せても税務署は情け容赦なく課税する。どれだけ税金がかかるかわからないが、年末調整が大変だ。仮にカジノで収入を得たとすれば海外所得となり、それにも税金がかかる。問題は税金だけではない。阿武町はこの男性を対象にすでに民事訴訟を起こしている。訴状には実名が記されている上、諸費用として500万円が上乗せ請求されている。敗訴すれば簡単に返済できる額ではない。男性はすでに有名人である。ネット上では誹謗中傷が飛び交っている。「ネコババを許すな」など、非難の声は犯罪者に対するかのように冷たい。もはや損得の問題ではないだろう。