米半導体メーカーのブロードコムは、クラウドコンピューティングを手掛けるヴイエムウェアを約610億ドル(約7兆7400億円)で買収することで合意した。半導体メーカーとしては過去最大規模の買収により、ブロードコムは一大ソフトウエア企業となる。
26日の発表資料によれば、ヴイエムウェアの株主は1株当たり142.50ドルの現金もしくはブロードコム0.2520株のどちらかを受け取る。買収額はヴイエムウェア株の20日終値を約44%上回る。この日はブルームバーグ・ニュースがブロードコムによる買収の可能性を報じる前で最後の営業日だった。
米ブロードコムがヴイエムウェア買収交渉、ソフト強化へ-関係者 (1)
ブロードコムのホック・タン最高経営責任者(CEO)は一連の買収を通じ、同社を業界最大級で最も多角化された企業に育て上げてきた。近年はソフトウエア分野に注力しており、2018年にCAテクノロジーズ、19年にはシマンテックの企業向けセキュリティー事業を買収した。
タンCEOは今回の買収について「当社のM&A(買収・合併)の成功実績を積み上げるものであり、われわれの半導体およびインフラのソフトウエア事業をエンタープライズソフトの象徴的パイオニアかつイノベーターと統合するものだ」と語った。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、ジェニファー・リー氏は、同買収は「反トラスト法(独占禁止法)上の懸念を生じさせるような取引ではない」と指摘。ただ、「反トラストを巡る現在の状況や、合併審査を強化するという連邦取引委員会(FTC)の使命を考えれば、詳細な調査を受けることになるだろう」と述べた。
ブロードコムの買収計画は、ヴイエムウェアの主要株主であるマイケル・デル氏やプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社シルバーレイクも支持。ヴイエムウェアが別の買収案を40日間募ることができる「ゴーショップ条項」も盛り込まれている。
ブロードコムは買収資金を調達するため、銀行団から新たな320億ドル相当のデットファイナンスの確約を取り付けた。買収手続きは同社の2023年度(23年10月終了)に完了の見込み。ヴイエムウェアの純負債80億ドルも引き受ける。
今回の買収合意を巡り、ヴイエムウェアはゴールドマン・サックス・グループとJPモルガン・チェースをアドバイザーに起用。ブロードコムはバークレイズ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、クレディ・スイス、シティグループ、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴを起用した。
原題:Broadcom to Buy VMware for $61 Billion in Record Tech Deal (1)(抜粋)